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 地に伏していた。身体の自由が効かない。目を開けると、そばに灰色の蛾の死骸が見えた。風でうすい翅がゆらめいている。翅の鱗粉がかすかに光る。蛾の数本の細い脚が、宙をつかみ損ねていた。顔をずらし視線を先に ....  冬の空は乾いている。遠くで鳥の鳴き声がしている。車のデジタル時計を見る。空腹で気持ちがわるく、くらみを覚える。午前9時。いや10時だったろうか。もう時間など意味はないかもしれない。昨夜、車の周りにい ....  ひとりでどのくらい走ったのだろうか。地平には果てがない。アクセルを踏み続け、車外の狼と平行して草原を突き抜けた。狼はときに宙を跳び、ときに地をすべり追跡してくる。車体に草や砂利があたった。街の明かり .... その日、だれかに呼ばれたような気がして、家から外にでた。近所の、さくらの並木通り、書店でコミック雑誌を買う。花を見ながら、小学校の前を通りすぎ、病院へと向かう。となりのレストランの、外壁の大きな鏡に、 .... せかい、というビンのなかに雨がふります。
あおくとうめいな悲しみが、
ガラスの内がわにすいてきとなって、
したたっていきます。

ビンのなかでも、
そらは、どこまでもはてがないようで、
 ....
引越をした日は、
青空だった。
近所の空き地の、
壁に、ボールをぶつけ、
グローブで受けとる。
ひとりで遊ぶわたしに、
アキラとリョウが、
笑みを浮かべ、声をかけてきた。

初登校の ....
自分すら他人に思える夜。わたしは無精ひげに、アクセサリーの水晶をつける。本を拾い読みし、起き上がりベッドにすわる。マリン・ブルーの表紙に手を置く。こめかみが痛い。胸に水晶の玉がゆれてあたる。外を走るバ .... みずうみ、の真ん中にたち、わたしはいっぽんの樹になる。

ふいていく風、わたしの身体をつきぬけ、
 腕をのばすと、せかいのかたむきから、はなたれる。

わたしの枝いっぱいの葉たちをそよがせる ....
あさがくる。
わたしはかがんだ姿勢で、静かに息をのむ。

空からおとされた、その夢から覚めきらず、
湖の底から、
裂けた形をした空を見上げる。
藻にからまり、
わたしは力なく、湖面をあお ....
わたしのカラダ。
植物のツタのようにほそくねじれて、
せかいの天蓋にむけて、
のびていきます。

くるぶしまでのひたる水。
は さざなみのように、
わたしをすくめ。

日のひかりいっ ....
カーテンのすきまから、
むかいの住宅の屋根のうえ、
うすくもり空を見上げる。
幾本もの電線が斜めに走っている。

窓を開けると、
わずかに残されたうすい青から、
凍えた風が吹きこむ。
 ....
 日曜日にわたしは、レジャーランドで、クリスタルのユニコーンを買い求め、夜のバスで家に帰る。窓の外は、暗がりの裂け目。
 窓には夜の空。自宅の浴室でうっすらとしたヒゲをそり、黒いセーターに着替えた。 ....
 わたしは失業し、夏を迎えた。記録的な真夏日が続いている。ここしばらく風邪をひいていた。咳が出る。寒気がす ....  女の声が頭の中に響く。澄んだ高い声。日に日に声は大きくなるような気がする。声を聞く以外、わたしには何もできない。偏頭痛がしそうで頭を振る。空き地に捨てられた車がある。栞を座席の上で見つけ、車の中に入 ....  わたしには女の声が聞こえる。誰にも似ていない声。でもひとには話さない。話す相手もいない。流木の散らばる砂浜。わたしはひとりで波間を眺める。ジーパンの後ろポケットに突っ込んだ神話の文庫本。もう何度も読 .... 手で、ずれた眼鏡をあげる、八月の、水をふくむ、曇り空。閉鎖された父の勤務先、N社の自動車工場の脇を通り、母の自動車で、霊園に向かう。いままで納めることのできなかった、父の灰が、眠っている。わたしは、新 .... 横浜の学校の帰り、
地下街で買った、
ドルフィンの絵を、
窓にかたむけて置く。
青い海の中、
海面には太陽の光がさし、
ついのドルフィンが、
気泡をだし、よりそいながら、
深みへと潜っ ....
七月の雨、
アルバイトの休日、
自らの髪をかきあげる。
爪から指の間に、流れる。
部屋には、青い光の点滅がある。
わずかに開けた窓からは、水の音がする。
身体を曲げて、寝返りをうつ。
手 ....
夜、
白い、
薬局の袋を、
脇のテーブルに置き、
ベッドで、
眼鏡をかけて、
サティのピアノ曲を、
BGMに、
月が映し出される、
ビデオを観る。

海の、
おだやかな波を、
 ....
江ノ島の砂浜で、
少年だったわたしは、
父とカイトを、飛ばした。
父の、大きな背の、
後ろで空を見上げる。
埋まる足元と、手につく砂。
潮風に乗って、
黒い三角形のカイトは、
糸をはり ....
一年に一度だけ、
わたしと母は、海草をとりに、
江ノ島に向かう、
その途中に、枯れ木の門がある。
昔、「厚生病院」と呼ばれた場所の前を、
母の運転する車で通る。
信号待ちで、助手席から、
 ....
あおばさんの光冨郁也さんおすすめリスト(21)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
落ちた後- 光冨郁也自由詩1008-7-25
砂漠となる- 光冨郁也自由詩1207-3-26
燃料切れ- 光冨郁也自由詩807-3-11
コミック雑誌- 光冨郁也自由詩1106-8-26
せかいというビンのなかにふる雨- 光冨郁也自由詩20*06-7-27
転校生- 光冨郁也自由詩1606-7-13
サイレント・ブルー- 光冨郁也自由詩406-6-14
みずうみの樹- 光冨郁也自由詩806-6-13
朝がくる- 光冨郁也自由詩15*06-5-28
色彩のカラダ- 光冨郁也自由詩706-5-24
斜線ノ空- 光冨郁也自由詩8*06-4-8
ユニコーン- 光冨郁也自由詩606-2-12
夏風邪- 光冨郁也自由詩6*06-2-11
ミニ扇風機- 光冨郁也自由詩4*06-2-3
空き地- 光冨郁也自由詩606-2-2
スカイライン- 光冨郁也自由詩1105-10-25
ドルフィン- 光冨郁也自由詩505-10-2
淡水魚- 光冨郁也自由詩805-9-24
ムーンライト- 光冨郁也自由詩505-9-22
点のカイト- 光冨郁也自由詩905-2-20
ペンギン- 光冨郁也自由詩6+05-2-14

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