夜にまぎれて
雨をみちびく雲の波
朧気に月は
触れてはいけないものがある
ということを諭すように
輪郭を無くし遠退いてゆく
深く、
深く息をして
雨の降りる前の
湿った空気の匂い ....
波が編む細やかなレースが
爪先の向こうで結ばれてはほどけ
刻と陽射しは
翡翠や白の模様をすこし深くに施す
水平線、と呼ぶには平らな
空と海の境界を見ながら
こうして言葉を探す自分を思う ....
冬空をながめ宇宙のはて‥
暗闇で 過去を見 未来が見えず
朦朧と 渦をまく
涙がひとしずく 流れるたび
心が溶ける‥春の雪どけ
氷つく 滝ツボが 一滴一滴
太陽と木々の反射の光に
雪わり草を ....
あなたに似ている
と。言われたくありませんでした
わたしはわたしに過ぎず
あなたのクローンではないのだから
あなたがいなければ
生を授かることはありませんでした
それだけは否定でき ....
ある学校の授業で
問題が出されました
イヌ クマ ヘビ ヒツジ ウサギ
この中で仲間外れはどれ
先生も生徒も
別に答えは何でもよかった
答えの理由を楽しむ
そんな問題でクラスは盛 ....
写真では思い出せる
ものがたりは忘れてしまった
楽しかったことの記憶だけ
振り返ることもなく
通過電車のあとを追う
錆びた風であれば
印画紙を風の色に染めて
完成する思い出
岩 ....
クリスタルの ボールが 放られると
ぼくらの ふたつの 土地や からだに
いのちに 焼かれた 対話が かがやいた
放擲 された ボールには ふらふら 泳ぐ
天の 子 ....
大学を中退した
だって
だるいんだもん
ダイエットにも失敗
大好きな
ダーリンが
ダメな私から
だんだん遠ざかっていく
ださい
大音量で
ダナグローバー聴いて
だらだらとベッドの ....
まあるく、まるくこの上を行く飛行船は四番目の空で
黄色や青に染まってみせながら、天井を越えていく
抱き寄せた僕の中では、懐かしい声が響いて
どうでもいいはずの、無駄な筆先が描く線でさえも
....
夜中
水道から
ぱたぱたとなみだ
海になんか辿りつかないのに
机の上で
しまい忘れたサラダが
哀しい彩りで居場所をなくしてる
きれいに一人分だけ残して
あたたかみをなくしたイスが
部 ....
いきぐるしさには
髪の含む人工の香りを
かすれるまで吸い込ませ
記憶がしびれるほどに
生白いわたしは
のみこまれやすいよう
出来るだけ
出来るだけたねにな ....
まっ赤で
おおきな歌に
くだかれた夕暮れの
かけらをよせあつめて
ぼくはトルソーを
つくった
奄美の島ざらめを
たくさん、うみにながしたら
おおきな涙に ....
微かに血の色を混ぜた
純白の火照り。
月光を浴びた濃淡の起伏が、
永くしずかに波打つ夜
幾重にも重なりあう
厳かな山脈を流離う爛漫、
滑り落ちる霞のごとく
裾野へ降りて散る花、死、花 ....
{引用=くりかえされる、すべてのいのちと
いとおしきわたしの二人称たちに}
わたしがあなたを産んだそのとき
それとまったく同時に
あなたがわたしを産んだのです
この、配線だらけの街の ....
ある日
贈り物をしようと出掛けた
セーターを買いに行き
サイズを聞かれた
わたしは答えられない
靴屋に行き
やはりサイズを聞かれ
答えられない
ネクタイを買いに行って
好みの ....
わたしはうさぎになって
寂しさを抱いて、眠った
よく晴れた朝を迎えて
腫れぼったい瞼に苦笑いを零す
鏡に映る姿は
うさぎというより
醜い何かで
涙が眼球を傷つけていく
ことん、と音がし ....
キラビヤかな クラブ
真っ赤なルージュ
艶やかな唇
カランコロンとグラスを揺らし
ウイスキーを飲みほす
ミラーボールに光る
夜のグラスな媚薬
甘い香りが
媚薬な夜をさそう
おどりが好きで夜を ....
ここは 江戸の街
桜 満開な 川の辺りを
館船で 遊覧は にこやかな姫君
うぐいすの冴えずる 朝は
姫君を いっそう 美しくひきたてる
桜の花びらが 水辺に奏を描く
ひとひら ひとひら
太陽が ....
うさぎの
みみが
ぐんぐんのびて
ふしぎになるのを
だまってみてた
ぼくは、
そんなに
できたオトコ
じゃない
しっと
に
むねやけして
かおの ....
嗚呼 今頃 汗を流しているかな
こっちは 思ったより 風が気持ちいいぞ
生命の縷々 断ち切れぬなら
流れのままに 摂理のままに
嗚呼 今頃 笑っているかな
こっちは 思ったより 風が ....
今宵も偽りの服を着て 裏の門をくぐる
嘘を吐くクチビル 罪悪感はない
ムズカシイ言葉を喋りだす テレビの音を消して
砂漠への時間を 優雅に楽しむ
タバコに火をつけないで 白い煙を吐かな ....
小枝の先に小さな緑が現れる頃
もう何度も使ってきた
「新しい」という言葉は
やはり新しいのだと不思議に感じる
今まで使ってきた言葉に
何かが足され
何かが積み重ねられ
今までにはない感動 ....
春風に ふんわり 浮かぶ
赤い風船 指先に絡まる糸が
するりとぬけおいかけても
手をかざしてもとどかぬ
青空高く 遠のいて
手をかざす ひとこま
とどかぬとも おいかけて転び
膝をすりむき‥ニ ....
あなたはわたしの眠っている横で
わざとらしくページをめくる音
つよく立てて
降り始めた雨を受け入れる
くらいまぶたの中で
弾ける赤い頭痛
あなたの読んでいる一行が
鮮明に浮かび上がる 夢 ....
明星が
響いて
眉間から
無邪気さだけが
踊りだす
畦道から
蓮華の色彩だけを
怯えながら
手折るように
ことばを
間引くと
やっと
....
泡と塗れる事に嘯き覚えて
僕が去っていった日曜日に
汚れた流線型が降り積もる肌に
華奢なライン真似て空が繋いでいく
プラスチックみたいなリズム
音がまねて吐き出す雲の中で
わずかな音は ....
亀を背負って
懐かしい人の苗字を呼びながら
塩を舐め続ける
水が飲みたい
+
かまきりの新しい
亡骸を
司書は黙って
見ている
+
カンガルーが直立したまま
波音 ....
ある
ありふれた
想い
という
呼び名の比喩が
争え
という
プログラムの元
生まれて初めての出航をし、
次の刹那
辿り着いた先が
温かい
実は
腹の上
だったと
結局
....
せせらぎの横で
赤い花の蜜を啜る
掌ほどの小さな命が
力強く羽ばたいている
ハミングバード
悲しみは置いてゆきなよ
君の小さな体では
あまりにも荷が重過ぎる
追 ....
仄白く明けてゆく空と
暦の眠りから覚めた蕾が
共鳴して
三月の和音を弾く
冬を忘れた陽射しは甘く
僅かに紅を挿した絹の切れ端に
はなびら、の名を与える
こころにある哀しみや空洞を ....
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