海岸沿いに露出した三十年まえのゴミ山のうえ
新しい嘆きがそっくりひとつ捨ててあった
壊れた自転車
割れたブラウン管
骨の折れた傘
骨折り損のくたびれ儲け
破れた心臓
そんなもののうえに
....
ぼんやり 新聞コラム 眺めてたら
女は 存在 男は 現象
つまり 全ての基本は女 だから
はじめに女ありき との文章
これはもう 現代常識である
聖書の記述は 間違えたのだ
好きに ....
夜中に台所で誰かに話しかけたかったら
話しかけたらいい
誰もいなかったなら蛇口にでも話しかけたらいい
君は自由だ本質的に
誰の手にも負えないくらいに
卑猥なことを叫びたかったら
夜空に ....
わたし
春の畑をあるく
やわらかな雨に匂いたつ
赤土
影の淡い腕が
いくほんも突きだして
足首をつかむ
でも
死んだ者のちからはよわい
幽明のあわいに建つあの門が
ぎらりん ....
マウンド上で大きく振りかぶった
金田正一の投げたストレートを
牛若丸といわれた吉田義男が
小気味よく弾き返すと
白球は強いゴロになって
三遊間を抜けようとする
あらかじめ心持ち三塁より ....
あさはまだくらいうちから
うしうまにえさをやり
いどでみずをくんで
ひえつぶのういたしるをすする
ひがのぼれば
たはたにでて
はるはあぜぬり
なつはくさとり
あきはかりとり
....
ハロー、ハロー
周波数はあっているか、こちらはDJ
十三年ぶりに新種のサンショウウオが発見されたそうだよ、皆さん
サンショウウオが好きなDJとしては久しぶりに嬉しいニュースだ
寒い日が続く ....
石鹸のにおい
休み時間の度に手を洗っていた娘がいた
両手で水をすくい
端からこぼれ落ちるところから飲んでいく
こんなふうに
僕の書く文章なんて
いつも隙間だらけの言葉足ら ....
きゃらめる 5
よる
1
なにもみえない
から
こわいんじゃない
なにもみえる
はずがない
から
こわいんだ
....
今日も朝から
洗濯機が大声で歌っている
オペラのつもりのようだけど
音痴で
しかも、時々声が裏がえる
近所迷惑だからやめてくれと言っても
聞く耳をもたない
ありったけの洗濯物を押 ....
まんじゅうの中には多分
夜
があるのだろう
だから
こんなにも甘くて
どこかに行きたくなるのだ
忘れてませんかね
繁栄を謳歌してるのは
地球の主役は
わたしらでっせ
哺乳動物がなんですかね
冷血どもがなんですかね
もちろん鳥なんて
あんなものは滅ぶべきですな
もっとも多く ....
台所で玉子を割り
箸で溶いて
フライパンでバターとからめた
食卓であなたと向かい合い
それを口にふくんだ時 はじめて
涙が溢れてきた
(お前も卵にはなれなかったのだね)
....
私の最大の罪は怠惰である。それでも私にしちゃがんばっていろいろ働いてるのだから、許してよねえ天の誰かさん。でも書けてないものいっぱいあるなあ、あれとかこれとか、口約束だけでいちども書けてないものもある ....
この度は思いもかけないことでなどと
気休めを言うものではありません
死ぬことは生きている限り必然で
むしろ生きていることこそが偶然なのだと
私たちは本当は知っているからです
眼前の笑いか ....
吐きたい吐きたいと思いながらようやく粥を啜る。
C型じゃなくてA型の肝炎なんだから死にゃしないと医者が言った。
まあ、死にゃしないんだろう。
死にかけですら、ないんだろう。
風が滅法強いの ....
たとえばそれは
黄色と黒の表紙がついた
どこにでもあるスケッチブックで
軟らかい鉛筆を握って
記憶の底の君の笑顔を
なぞってみる
のだけれど
たとえばそれは
終電を逃しちゃった
....
悲劇的な物語にしてしまったら
たやすく感情移入してもらえるだろうか
たとえば私の恋人は
そのむかし精神を病み錯乱したあげく入院して
退院したとたん自殺してしまったと
でももうそれはむ ....
蜜柑の里の海辺の丘で
まるで童謡の一節みたいに
蜜柑の里の海辺の丘で
太平洋に浮かぶ船をみている
船は遠くて
たぶん大きいのだろうけど
ちいさくみえる
たぶん動いているのだろうけど
....
暑中お見舞い申し上げます
今年は母さんの新盆だから
せめて墓参りにくらいは帰ってきなさい
父より
追伸
そういえばクロがおとと ....
胃が四つに分裂しています
健康診断の結果、そう言われた
どういうことなのか理解できずにいる私に
つまりは反芻するということです
医者はたたみかけるように言う
反芻とはウシがするあ ....
兎の好きな彼女のために
ペットショップで衝動買いをした
白地に茶色で小さくてかわいくて
その頃僕たちは同棲をしていて
彼女はその兎をピーターと名付けた
2DKのアパートの寝室だっ ....
悲しみは忘れた頃にやってくる
悲しみの上にも三年
悲しみ盆に返らず
千里の道も悲しみから
咽喉元過ぎれば悲しみ忘れる
悲しみの悲しみによる悲しみのための悲しみ
....
料金が足りませんからと
窓口の向こうの若い局員は不機嫌そうな顔で
茶筒みたいにふくれた封筒をつき返した
そりゃあ、足りないのは僕の落ち度ではあるし
深夜勤務の彼にはちょうど今頃が
一番眠たい ....
夕べどうしても読みたかった本があって確か俺は持っていたはずなんだけれど今思い出してみると、別れた女に貸しっぱなしになったままであったりする。もう15年も前の話になるので時効は成立しているんだろうか?そ ....
姉は 目覚めて 自分が
見慣れたヒースの野原にはいないことを知った
姉の夫は彼女を顧みなかった
姉の夫は他の女と愛を誓った
姉の子供は流れ去った
姉はだから子どもたちと男たちを憎んだ
....
腰のものを赤く染めて鳥が鳴く。
うぶめ、と呼ばれる鳥である。
産の穢れに死んだ女は鳥となる。
ほう、と鳴くが聞こえるか。
生まぬとしても女は女と男は言う。
うぶめの悲しみを知らぬは幸福と ....
二十数年前
大量の醤油を飲んで自らの命を絶った科学者がいる
それが私の父だ
いったいどれくらいの醤油を飲んだのか
警官が説明しようとすると
母はそれを遮り
私の手を引いて長い廊下を歩き ....
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