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- マルガレーテへ -
懐かしい旋律よ 黒髪が黒い鍵盤を浸す時
古い一族と共に お前は 滅びる
彼女が今 白い鍵盤を 血の赤で汚している
彼女の唇が ....
何処までも響いて鳴り止まない森の梢たち
降る雪が そうして白金の鈴を鳴らしている
耳の先の黒い兎が 雪原を駆ける
(優れた獣は所謂 「気配」を感じる
視聴覚と触覚、臭覚を統制する ....
黒い水晶の森を 黒曜石の渓谷を
吹き抜けて 暗がりの新緑を 震わす風
やがて透明に 純化されてしまう 花粉を
雪の結晶のように鋭利に 纏った有害な
棘ある風 絶えない夜
暖かくして ....
一昨日 蒼が過ぎる空の下で
随分と酷く滑稽な光景
轢かれた猫の死体 朝の冷たい路上
それを拾い上げ 持ち去る精神異常者
・・丁度きっと何かを祈りたい気分だったのだろう
昨日 大空の下で ....
それらの視線
それらの仕草
それらの言葉
それらの感情
ただ心に浮かんだ気持ちを
少し呟いただけなのに
場違いな吐露とでも言わんばかり
ほんのここ数年間
伴侶といえる相手がいな ....
泣いているかと思えば暖かく
微笑んでいるかと思えば寒い
まるで誰かさんのような季節
明日はどんな声を聞かせるの
笑顔さえ見られたら
それで満足だからとか
殊勝な戯言を口にして
もう少 ....
朝 目覚めると、僕の身体の上には一つの箱が置かれていた。
それは薄汚れていて、大きい。降るとカラカラと音を立てた。
「奇怪だ、目覚めたばかりの僕にこんなものが用意されているなんて。
奇怪だ、こ ....
夜明け前
夜を操る 鳥の声
「この歌で夜を叫ぶ 産声の主は一体 何某か?」
黒檀の夜の中心で
一羽の巨大な鳥の翼に
覆われて 視界は黒く埋められた
聴覚で見ろと
胸の熱い 心 ....
ふと君と出会ったので
なにを思ったのか
結婚する気になってしまい
程なくして言葉に出してしまい
ふと言葉に出してしまったため
なにを思ったのか
結婚することが現実的に思え
程なくして ....
影響
少しだけの賞賛が
少しだけの満足が
少しだけの尊敬が
少しだけの裕福が
それが人生の全てだ
と気づくのに人生の大半を費やしてしまった。
少しばかりの賞賛と
少しば ....
見渡すかぎり曼珠沙華
曼珠沙華だけの世界に
二人で行った
風もなく、音もなく、香りもない
ただ、曼珠沙華だけが咲き乱れる
あか、赤、紅
すべてが止まってる
....
ふと空を見上げると
夏じゃないって思う
そうしたら次の日から
「秋」
って言葉が
「秋」
って言葉を
耳が敏感に聞き取るようになる
静かなそら
澄んだ風
クリー ....
今日がまた過ぎていく
静かに確かにゆっくりと
たゆたう隙間も無いほどに
日常を告げる音が一つ
扉の向こうから誘ってくる
差し出される指はどれも
明日から伸びてくるばかり
もし彼岸 ....
この世で一番に苦く美味い酒は
心が独りぼっちになった時になって
初めて味わえるもんなんだぜ
独りぼっちになる為に
どうしたら良いのかって言えば
まぁ割と単純で簡単なことでさ
例えば ....
ふとホテルの窓を開けて
景色を眺めてみたくなった
泊まり慣れたビジネスホテル
四缶目の酒を呷りつつ
少し薄くなった頭髪を気にする
まだ大丈夫だとは思うけど
目的も夢も自分自身でさえ ....
吸い込む煙に咽こんで
突き抜ける頭痛に把握する現在
何より無く何故も無く
成すべきと定めた納期を
遣り繰りするだけに生きている
山陽道に横たわるモグラ線を
時速三百キロで駆け抜ける退屈 ....
まだ二十代になりたてだった頃は
自分が周りに溶け込めない原因を
責任転嫁することばかり考えていた
全社会議が終わり、その後は飲み会
いつものように空気を読まない発言と
オチに使われる存在 ....
たましいの
とても遠いところに
らせん階段をのぼる人がいる
僕らは気づかないふりをして
紅茶を飲む午後のひとときも
その人はいつでも
らせん階段をのぼり続けている
とても落ち込んだ時 ....
外国に行きたくて
海を歩き続けた
それなのに
海はどこまで行っても
海のままだった
道に迷わないように
紙幣をまき続けた
それも尽き果てる頃
家に帰ろうとして
鞄から地図を取り出 ....
自転車のタイヤがパンクしたので
中からチューブを取り出したら
古い友人が出てきた
すっかり雰囲気が違って
歳をとったのか
顔にはたくさんのしわがあった
飴をくれる癖があったので
すぐ ....
カメラマニアの父は
ファインダーを通してでしか
娘を見たことがなかった
娘の結婚式の日
撮影は業者に任せたので
父ははじめて娘を
ファインダーを通さずに見た
僕が欲しかったのはこ ....
いつか
目の前の少女が
いなくなる
そんな未来のことを
考えていた
少女は僕に
やさしく微笑んで
お似合いの白い帽子を
空高く飛ばした
落ちていく帽子を
目で追いながら
....
水道の蛇口から
船の汽笛が聞こえる
船に乗った
親子の会話が聞こえる
いつになったら
港に着くの
少女の声がする
父は黙して
母はかもめを指差して
話をそらした
遠い昔
....
見えないものなど何も無いと
空に嘯いてみたとして
足元に転がる雑多なガラクタの中
光る石ころが拾えないならば
いかほどに意味があるのだろう
振りかざす善意に埋もれた慟哭
今日も薄っぺら ....
偏平で退屈な日常
注ぎ込む情熱などありもしない
単に認めたくなかっただけの
小僧が夢の中で吠えている
嘆きが聞こえる気がするけれど
そりゃきっと気のせいだ
人生 君らが思うほど
美し ....
もうそろそろクローゼットから
暖かいコートを取り出そうかな
年々早くなっていく
気がつけば、と言う意識
去年の今頃を思い出す今日のように
この前もそのずっと前も
繰り返していたんだろう ....
向けられた笑顔の全てが
嘲りだと信じていた時期がある
空が曇れば必ず雨が降り
見惚れた花は明日には枯れる
呟いた言葉が嘘に塗れ
聞き続けたい声はやがて遠く
確かなものは何も無い
....
碌に街灯も無い坂道
心も体も疲れ果てた
無気力な家路の果て
残飯を漁る野良猫の
縄張りに知らぬ間に踏み込み
精一杯の威嚇が向けられる
僕は苦笑だけを浮かべ
心の中そっと呟いた
....
丘の上にかつては 養蜂場があったけれど 長い時間に淘汰されて 一対の傾斜だけが残った 永久機関を試したくて 時おり勾配を上っていく かわいた木馬の姿はいつも 同じところで見えなくなるので そこから先が ....
街はゆっくり朱にそまる
ポケットに手を突っ込んだまま
身体を縮めて
僕は焼けていく空を見る
白い息は宙を舞う
涙が零れて
それは嗚咽になった
僕はもうどこ ....