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死にかけた
山で吹雪の
向こうには
斉藤の部屋
の灯りがある
息子が生まれた日のちょうど一ヵ月後、
わたしはそれまで勤めた職場を辞めてきた。
午後四時半頃だったと思う。
いつもより早い帰宅に不穏な顔をしてる妻、
わたしはアパートのドア ....
やさしさを踏み潰して
戦車が行く
威嚇射撃する
よく狙って
決して当ててならない
愛する人のために
愛する人を殺してしまう
テーブルの上にある
君からの置き手紙 ....
好きなものばかり追いかけてると
好きではなかったものがばかり
追いかけてくる
わたしは猫が好きなのだ
犬に追われながら
犬を撫でようとしたら
噛まれてしまった
猫に引っ掻 ....
お寿司とお刺身の
違いのように
僕らにも違いはあるだろうか
と話す
その人のことなんて
何ひとつ知らないのに
握り合う手と手は
生ものの
さかなのように ....
羽がなくても
ひとは空を飛ぶ
鳥でした
片方をなくしてしまった
羽を見つめながら
ひとは
時々そう思うのでした
かつて
手をつなぎあって
羽ばたいていた
時間がありま ....
そういえば
結婚式しなかったね
ときどき妻が言う
僕は聴こえないふりをする
本当に
妻がそう言ったのか
確証のないまま過ぎてしまう
日々の幻聴のように
出会ってから
十 ....
冷凍庫に
たくさんの思い出が保存されている
消費期限が古いものから解凍して
毎晩妻と二人で食べる
これは去年の夏の海ね
妻がうれしそうに話す
去年の梅雨の日のドライブ
まだ残って ....
片恋のボタンはずして息をする
坂道を二人乗りして夏が行く
できたての朝は真夏のゼリーかな
水族館ガラスに映るあなた見てる
砂浜の足跡がまた波に消え
潮騒の残響に潜む君の声
幼稚園でぼくは人生ではじめての
本格的な人間関係を体験する
触れるだけで傷がついてしまいそうな
新芽みたいな人間関係は
なまきずが耐えない心の訓練
お母さんはいない
苦しくても悲しくても
....
夕陽がしぼんでゆきます砂時計
冷凍庫いつかの恋がフリーズドライ
夜景はね化粧が下手ねとすっぴんで
片恋はまた雲となり俄雨
言いそびれし言葉のジュラ紀の地層調査
またあした ....
「百万円といったら、大金じゃないですか。」
驚く私に、老女は、落ち着いた様子で笑いながら言う。
「ふつうだったら、そう思うかもしれません。でもこれで人生、やっと清算できた思いなのです。」
電 ....
雨が降ると誰かが
迎えに来てくれるような
気持ちになります
傘を持っていないふりをして
しばらく軒下に立ってたら
偶然あなたはあらわれました
雨、ありがとう。