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若草色のかざぐるまに
しがみついていた、あの人が
夕風にさらわれて
私の中を流れてゆきます
水たまりの映す青さの
ほんとうを
確かめるまえに
軽々と飛び越えて
もう
行ってしまっ ....
月光をすくい、すくって
髪を洗い
ほっそり
とうめいな櫛を曳く
鎮まってゆく肌、肌に
しみこんでゆく
流麗な調べ
{引用=
呑まれても
ひとひら
抱きしめても
ひとひら
....
私は元来
無口な男でありまして
うっかり、思慮深く思われがちですが
それは、本心を秘めている
というより、むしろ
現すタイミングを計れない
どうにも不器用な人間なのです
何か言わ ....
帰宅ラッシュだった
階段で圧力に耐えかね
ひょろ長い女の背を
あわあわと胸で押してしまった
(押すなよおっさん!
おっさんではない
武士である
{ルビ法度=はっと}に ....
春へと続く回廊は
まだ細くて
差し込む光に
白く歪んでいる
三月は
足裏を流れる砂の速さで
大切なものを{ルビ攫=さら}っては
あやふやなものばかりを
残してゆく
いくつ ....