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紙の水面から沈んでいく
鋼鉄の季節、眼はあなた
乾いた舌で皮脂の
履歴が記された頁を朗読する
排水機場の細かい部品が
錆びて赤茶けていく
ざらざら、その過程
時間はあなた
母さん、
ほら、春の風が吹いて

そろそろ僕も
行こうかと思います

春の風は早足で駆け抜け
いつも、僕は一人残されてしまうから
風のすべてが海の向こうに渡る前に

そろそろ行 ....
自分の名前がついてるとも知らず
いわしは
雲を見ていた

自分の名前すら知らないままに
その赤く染まるのを
「ふ」を付けただけで
不幸せになるのなら
最初から幸せなんていらない

「む」を付けただけで
秩序を失ってしまうような世界は
多分まぼろし

「み」を付けただけで
来るのだろうか ....
テーブルの上に何かを忘れてきてしまった
いったい何を忘れてきたのだろう

それは大きなもの
ではなかった
かといって小さなもの
でもなかった
賞味期限が切れそうなもの
でもなく
 ....
こびとは手紙の最後に
「こびとより」とそえたあと
「こ」と「び」のあいだに
小さく「い」の字を書きくわえた

しばらくながめているうちに
恥ずかしくなったのだろうか
てのひらで手紙を丸め ....
妻と相談して
家にエレベーターを取りつけることにした
けれど、取りつけた後で
この家には二階も地下室も無いことに気が付いた

ボタンを押すと
チーン
と音がして扉が開く
上にまいりませ ....
濡れズボンが風にそよいでいる
明日ごろまで生きていれば
多分それを穿くわたし
ねえ
あそこに流れていくものを
いつから雲だと知ったの
二十数年前
大量の醤油を飲んで自らの命を絶った科学者がいる
それが私の父だ
いったいどれくらいの醤油を飲んだのか
警官が説明しようとすると
母はそれを遮り
私の手を引いて長い廊下を歩き ....
春日野佐秀さんのたもつさんおすすめリスト(9)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
水面- たもつ自由詩408-5-12
旅立つ- たもつ自由詩1603-12-28
いわし雲- たもつ自由詩1603-11-19
抱きしめる- たもつ自由詩803-10-27
忘れ物- たもつ自由詩1603-10-24
風にわたって- たもつ自由詩1403-10-20
世界エレベーター- たもつ自由詩3903-10-14
明日ごろまで- たもつ自由詩903-10-14
醤油- たもつ自由詩9103-7-9

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