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あなたのくちびるから海がこぼれる
塩からい水が胸を濡らすから
わたしは溺れないように息をする
そっと息をする
空の高みが恋しいと指先をのばし
両手を広げてみるけれど
あなたの海が追 ....
誰も知らない小さな広場に
誰も知らないサーカス、星をかかげて
青いテント 青いテント
少年は見つけた 舞台の上に
真昼の光線のしたたりを浴びて
少女が一人 くるくる回る
風のようなピルエッ ....
それは朝陽を煌々と浴びる
蜜のような栗毛だったろうか
それとも夜のように流れる黒いたてがみ
そんな事は重要ではないのかも知れない
長いまつげを震わせる一頭の馬が
街角をひっそり駆けてゆく
....
緑の山に響くのは
わたしの声か 呼子鳥
夏の滴りに濡れそぼち
わたしはわたしを呼んでいる
遠い風に乗り響くのは
わたしの夢か 呼子鳥
それともあのひとのささやきが
わたしの耳もと ....
倒れる
水差しが
ふとしたはずみで指先に触れ
ゆっくりと音もなく
まるで夢のように
倒れる
デイジーの{ルビ花弁=はなびら}が
こぼれた水の上に散らばって
白い沈黙
切なさに ....
耳をすますと
遠く潮騒が聞こえる
ドアを開けば幻の海
白い波頭が立って
空はおぼろに霞み
「春だね」とつぶやくと
「春ね」と君が応える
潮風が弧を描いてゆく
君の長い髪がゆらめ ....
それは
濡れた樹々の梢に透かし見た
緑の扉
明るい庭先のその扉を夢見る
光と影を刻み憧れにたたずんで
あるいは移り変わる街の喧騒の中に
待ちくたびれて
人知れず錆びついていたあの扉
そ ....