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薄くにじむ曇天に
陽は破れ
私たちは歩く
口の尖った犬を抱えて
濃い実の残る柿の梢に
風をぶら下げて
風の飛び去る松の林に
大きな瞳を棲まわせて
薄くにじむ曇天に
陽は動かな ....
「ぶっとび市」というのがあって
白地に赤の幟旗が何本も
雪の壁に並んでいる
二〇一一年二月十一日
町は風が吹いて
人は四方にかしいで
青空が小さな冬の森を翳らせている
何がいやと言って ....
だれかぼくに
長い手紙をくれまいか
すっぽり暗いすり鉢の空の底
吹雪のあけた だだっぴろい広場に
まんべんなく雪は敷き詰められて
だれかが夕暮れの紅いろうそくを吹き消す
すると
取り ....
ぼくはずっと眠っていた
家並みの混んだ路地の奥
細い電線が空に絡まる保育園の
二階のしわくちゃな布団の上で まんまるに
ぼくの夢の上を白茶けた紙飛行機と
たくさんの紙の砲弾が行き来した
....
堅く編まれたお下げの編み目
その幾条の行方を見澄ます幼いぼくの肩越しに
さびしいぼくをくすりと笑う
ぼくと誰某と
そうか
こんなにもはやく陽は動いて
窓の下に深い沼をつくっていくんだ
....
目覚めると泣いている
車窓を過ぎる色の落ちた看板
路地裏のひまわり
僕が僕から立ち去ろうとして
ふと吹き込むふるさとがある
立ち枯れた楓の根元にしゃがみこみ
裾を引くふるさと
囲炉裏 ....
午前五時
体内時計が鳴り渡る
目覚めの渚に並ぶもの
幾本ものやせた丸太
あちらこちらと転がして
いやな朝を反芻する
窓の外には
晴れない空
窓辺に歩み寄る
秒針
夜 ....
郊外の小さなガソリンスタンドは
原油高騰のあおりを受けて
なかなか車が入らない
漆黒のボディが入らない
幟旗を並べて
キャンペーンを実施中
原油高騰大サマーキャンペーンを実施中である
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