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1
目覚めた時に
あるはずの枕元が
きみの鎖骨の中で
蒸発していた
(そういえば
(春をしまい忘れてたんだっけ
2
全ての
歩行者信号が
赤になっている
雨の季節の始まり
....
冬の滑り台は
凍ってしまって
子どもたちの
渋滞が起きている
春になると
一斉に放流されるチャイムで
淀みなく帰路に着く
足がたくさん生えてくる
(きみがいいと言うのなら
(もう ....
冬の明け方は
張りつめた
無数のピアノ線が
地面と空を繋いでおり
知らずに触れてしまうと
冬の心音を奏でてしまう
透明な波のように
冬の涯てには
凍りついた楽章が打ち寄せる
夜が明け ....
噛み砕かれた
朝の死がいが転がっている
果実の並ぶ
健全な食卓からは
冬を裂く音が聞こえてくる
雪解け
のような発声で
猫が毛玉を吐いている
猫から吐き出された毛玉は
新たな猫になり ....
「rain」
雨、という現象が
印象派の庭です
水の詩集をさらさらとめくる雨音が
萌芽の眠りを妨げて
やわらかく湾曲してゆく
午後からのカーブを描いてゆきます
「あの人は、光 ....
発掘された、在りし日の六月の
古びた雨音が
薔薇の設計図を、紐解いてゆく
忘れては、いなかった
あたたかな泥土を
何度も重ねてゆく、あなたの
華奢な白い指さきで
白く、ぼんやりと ....
花は
花としての言葉を失い
季節もまた色を失う
渡し損ねた言葉があるように
雨もまた
流れてゆくのだろう
春の窓辺を飾るもの
無言の結露
人見知りの鳥たち
か細い茎の名前の知らな ....
「廃墟/光」
その人は
十月の淡い光がこぼれている
窓際に立っていた
下生えを啄む鳥たちが
驟雨の後に立ち去った庭で
透過性の
グラン・ジュテ
軽々と
その人は
超えてゆく ....
─まいにちうまれるものたちが
─まいにちしんでゆく
眠り、浅い夢からさめたような春の予感のする少しつめたい風が、名付けられているはずなのに誰も名前を知らない雑草の頭を、さあー、と撫でてゆく放課 ....