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白い壁に掛けられた 
金の額縁には 
名も知らぬ画家の描いた 
淡い水彩画の少女 
朝の光に透けながら 
すきま風に膨らむ
カーテンの窓辺に佇む
黒い瞳の少女 
日々多くの人と .... 
鏡に映る 
ふぬけた{ルビ面=つら}が 
自分だと気づいた日 
自らの顔を 
つくりなおしたい 
と思った 
( 生きること
( そのものが、
( たった一つの答だよ・・・ 
 .... 
汗をかいたグラスの前で 
ケーキが跡形無く姿を消した 
白い皿の上 
スプーンとフォークはうつ伏せて 
優しく寄り添っている 
昨夜の別れ際 
握った君の手のぬくもりを 
思い出す午 .... 
テレビをつけると 
瓦礫の山から掘り出され 
額に血を流した中年の女が 
担架から扉を開けた救急車へ 
運び込まれていた 
その夜 
テレビの消えた部屋で 
歯を磨き終えたぼくは 
 .... 
平日、日がな部屋に篭り、息が詰まりそうであった。 
暗い部屋の雨戸の隙間から射す一条の光に呼ばれて、
ベッドから身を起こし、外へ出る。 
( 日を浴びて、空を仰いで、息を吸い込む ) 
 .... 
水仙の花のように 
できるかぎりの背伸びをして 
星の花びらの中心に開いた
黄色い唇から 
恥ずかしげもなく 
むじゃきな唄を奏でたい 
( 昔々
( 少年ナルシスは 
( 自らの .... 
幼い頃に広かった幼稚園の庭。大人になって訪れると
不思議なほど狭くなっていた。密かに憧れていた保母
さんは、ふたりめの赤ちゃんをだっこして。お腹の太
ったおばちゃんになっていた。 
年を重 .... 
ましろい表紙の中心に
産み落とされた
原石の塊
見えない核に宿る(詩)に結ばれ
六つの方角へと 
自らの背を伸ばそうとしている   
( 遠天の夜空に燃える太陽 
( あるいは明け方 .... 
たいして金のないわが家に 
いずれ残ったら金をくれと言っていた 
付き合いの長いSさんが来たので 
眉をしかめていた僕は 
家にいたくないので外へ出た 
散歩の途中 
なだらかな坂を上 .... 
仕事納めの年末に 
1月から他部署に移動するAさんと 
老人ホームの風呂場を{ルビ掃除=そうじ}した 
「 わたし家では掃除なんか
  ろくにしないんですよ〜  」 
とにっこりほほ .... 
( ピエロは独りよたついて
( {ルビ歪=ゆが}んだ後ろ姿で
( 深夜のネオン街を横切ってゆく 
早朝 夢から覚めると 
そこはネットカフェの個室だった 
昨晩は酔いどれたまま
揺 .... 
机に置かれた一枚の写真
若い母が嬉しそうに
「 たかいたかい 」と
幼い彼を抱き上げている
年老いた母は安らかな寝顔のままに 
「 たかいところ 」へ昇ったので
彼はひとりぼっちに .... 
夜寝る前に読書していると 
開いた本のなかから 
うっすらと光を帯びた手があらわれ 
わたしに差し出されていた 
その手を握ると 
不思議な想いが心に流れ 
明日に怯えるわたしの影は  .... 
ピエロは 
いつも装っていた  
彼のまわりには  
いつも明るい{ルビ日向=ひなた}があるように   
ピエロは  
どうでもよかった  
彼のことを  
まわりの人々がどう言おう .... 
2年前 
中年夫婦で営んでいた 
ふっくら美味しいパン屋さん 
大洪水で流された 
跡地には 
独り身の{ルビ若旦那=わかだんな}が一人で開いた 
手打ちの美味しい{ルビ蕎麦=そば}屋 .... 
{ルビ滑稽=こっけい}な自分の姿を{ルビ罵=ののし}られ 
哀しい気持で歩いてた 
帰って来た家の門の 
足元に置かれた 
ハロウィンの{ルビ南瓜=かぼちゃ} 
皮をくりぬいて 
 .... 
日曜の午後 
立川のカレー屋で行われる結婚式で 
新郎新婦に贈る小さい花束を傍らに 
大船駅から乗った東海道線に揺られている 
向かいの席に座った空色の服の女は 
携帯電話を鞄の上に持っ .... 
プラスティックケースの上に 
並んでる、ふたつのせっけん 
小さいほうが、お婆さん 
大きいほうが、息子さん 
「 生まれた時は逆だったのに 
  わたしに向かってハイハイしてた .... 
竹筒の側面の穴に生けた
{ルビ秋明菊=しゅうめいぎく}の白い花々 
境内に奏でられる{ルビ雨唄=あまうた}に耳をすまし 
そっと{ルビ頭=こうべ}を垂れている 
{ルビ些細=ささい}なこと .... 
壁に{ルビ掛=か}けられた 
一枚の絵の中の蒼い部屋で 
涙を流すひとりの女  
窓からそそがれる 
黄昏の陽射しにうつむいて 
耳を澄ましている 
姿の無い誰かが 
そっと語り .... 
雨の降る夜の路地裏を 
酔っ払いの男は一人
鼻歌交じりに 
傘も差さずに歩く  
涙色の音符を背後に振り撒いて
雨は降り続き 
路上に散らばった音符は濡れて 
よろけた男の後ろ姿は  .... 
幾枚かの{ルビ花弁=はなびら}が舞い落ちる 
淡い光のあふれるいつかの場所で 
あの日の君は
椅子に腰かけ本を読みながら待っている 
いたずらに 
渡した紙切れの恋文に 
羽ばたく鳥の .... 
旅の終わりの夕暮れに 
車窓の外を眺めたら 
名も無き山を横切って 
雲の鳥が飛んでいた 
{ルビ黄金=こがね}色に{ルビ縁取=ふちど}られた翼を広げ 
長い尾を反らし 
心臓の辺 .... 
早朝 
{ルビ浴衣=ゆかた}のまま民宿の玄関を出ると 
前方に鳥居があった
両脇の墓群の間に敷かれた石畳の道を歩き 
賽銭箱に小銭を投げて手を合わす 
高い木々の葉が茂る境内を抜けると  .... 
東の空に日が昇る早朝 
工事現場の低い土山の頂に 
クレーン車が一台
運転席には裸の王様が{ルビ居座=いすわ}っていた  
黄色と黒の{ルビ縞々=しましま}の 
柵に囲まれた小さい世界の .... 
机の上に三冊の本を並べる。 
一冊目を開くとそこは、
林の中の結核療養所。 
若いふたりは窓辺に佇み、 
夜闇に舞う粉雪をみつめていた。 
二冊目の本を開くとそこは、
森の中のらい .... 
夜になってから急に 
庭の倉庫に首を突っ込み 
懐かしい教科書を次から次へと処分して 
家の中に戻ったら 
腕中足中蚊に刺されていた 
それを見た母ちゃんは、言った。 
「あんたはつよ .... 
うたたねをして目覚めると 
一瞬 {ルビ黄金色=こがねいろ}のかぶと虫が
木目の卓上を這っていった 
数日前
夕食を共にした友と 
かぶと虫の話をしていた 
「 かぶと虫を探さなく .... 
長い間
{ルビ棚=たな}に放りこまれたままの 
うす汚れたきりんのぬいぐるみ 
{ルビ行方=ゆくえ}知らずの持ち主に 
忘れられていようとも 
ぬいぐるみのきりちゃんはいつも
放置され .... 
「純粋」と「不純」の間で 
へたれた格好をしている私は 
どちらにも届かせようとする 
執着の手足を離せない 
一途に腕を伸ばし開いた手のひらの先に 
「透明なこころ」 
( 私は指一 .... 
 
 
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