ほうらご覧よ
あんなに見事な

ゆるりゆるりと
銀の鱗を光らせて
水面に映る魚のよう

ゆるりゆるりと
眺めていたら
水の底から
見上げてるのは
こちらのほう

銀の鱗の魚に ....
まだしっかり帽子をかぶった黄緑の
君の大切なたからもの
やわらかい手が両方ふくらんで
哀しそうに助けを求める
ひとつも手放したくないんだね

小さなポッケを教えると
手の隙間から零れない ....
秋の空気には
透明な金木犀が棲んでいる


陽射しに晒した腕が
すこし頼りなく感じ始める頃
甘く季節を騙す匂いは
思い出の弱いところを突いて
遠くにいるひとの微笑みだとか
風邪気味の ....
布団だか
地べただかわからなく
倒れこみ
かいだ匂いは
金木犀

嗚呼
わたしは

それだけで
しあわせ者だ
これは
いつか見た紅葉
遠い日の青空

いまは
もうない
黄色い枯れ葉

その場所に
いくつも過去が
生きている

過去が
現在を飲み込む




ここには
過 ....
君と
君の子供と
動物園へ遊びに行く

動物園のない町に住んでいるので
キリンもカバも見たことがないからと
地下鉄に乗っている間も
図鑑で予習に余念のない二人を
窓鏡に映る姿で見つめる ....
朝に
林檎がもがれる


それは
太陽になり
風になり
私のもとへとやって来る


おはよう
ごきげんいかが
と はにかんで


さくりと
歯に当てた
ほのかな酸味
 ....
ツクツクボウシが鳴き細り
ぼくらの夏が終わる

夢をいっぱいにはらんだ風が
尖ってゆく

去年のいまごろ
あなたが放してやった
あの魚が
黄金色に輝きながら
ぼくらの明日を
運ん ....
それは
私が見た
たくさんの野を駆け
私が見た
たくさんの空を駆けて
いつも また
ここに帰ってくる

別のかたちが あるなら
どんなに いいだろう

目覚めた 明け方の
浅い ....
みずをのんでると透明になってく

と、云う
ある女の子のへやには

からっぽになったミネラルウォーター、の
ペットボトルがやたらにころがっている

なので
すこしだけためらってしまう ....
雨あがりの古びた公園
枯れ葉の匂いが目にしみる
火傷したように赤いからだを
ぼんやり 揺らす

それも ほんのひと時のあいだ

優しいふりしたお日様が
ふいに悲しい風を運んできて
僕 ....
けちよー!

けちよー!

ゆらびもす ぐらなだみすけちよー!

ほんまどんな空にあゆたう
きめこまやかな
そらのいろにひるがえしひきかえし
たむすけなるくもりのなみま

空粥ゆ ....
また少しネジが緩んだ

私の中でくるくるとメリーゴーランドが回りだす

夜の暗い遊園地

メリーゴーランドだけが

くるくると光り輝きながら回る

いつまでもいつまでも回り続ける
 ....
ふと
金木犀の匂いがした

気がしたんだけど

まだ
咲いてないだろうと思う

洗濯物は
乾かない


いまはまだ
無理

いつか

金木犀の大樹の下で
橙色の雨を ....
巡りあわせの歯車の
ひとつ欠けてしまった噛みあわせ
それでも
偶然は何事もなかったかのように過ぎて行くので
わたくしは あんぐりと みていました

あの方の書き残した言葉が挟まったまま
 ....
葡萄の葉陰に{ルビ抱=いだ}かれて
青い果実のひとふさは
日ごと重くなりました

花びらのかわりに
熟れた種子をいっぱいにして
向日葵は皆うなだれました

高い空
すうと流れる
赤 ....
手のひらサイズの

ノートを買った

白紙で 綺麗で いい匂いのする

白紙のノート

物語や ミステリーの

ネタ帳にしようと思ったけど

やめた

途中で書くの 

 ....
  いらっしゃいませ
  
 私は涙のアメ屋さん
  
 このアメはいかがです?
 
 悲しみの涙を集めました
 しょっぱいけれど
 スッキリしますよ?
  
 このアメはいかがで ....
空をあおいだとき
こころはすでに羽ばたいている

青空に溶け
どこまでも広がる未来を抱えて
翼をもたない、にんげんも
昔私は2つ下の弟に
私は本当は他の星から来たんだと嘘をついた

それはちょうど私が小学校に上がる頃で
家には新品のランドセルがあった

どうしてそんな嘘をついたのかは分からないけど
弟は ....
どこへ続くかなんて知らない

呟きながら
レールを敷き詰める私

そのレールを通るのは
私ではなく
どこかの
誰か


私の役目は
それを眺めて
続きの途絶えを防ぐこと ....
どうでもいいのだけれど
死んでくれとお願いされたら死にたくなる
罪を赦されたような、ふしぎに愛しさを覚え
そして、泣きたくなる
独りという存在で

猫になりたい、と漏らすと
だめだよと、 ....
  あなた、ルリツグミのヒナと
  お昼寝をしたことはあって?



風を確かめるように浮かべた
少女の白いあご、のライン
穏やかな微笑みに
たたまれてゆく{ルビ睫=まつげ}


 ....
遠い遠いところから密やかに膨らんで
大きく高く重くうねった黒い波のように

その哀しみは時々にやってくる

泣ける時にはタオルケットを
丸めて抱き締めながら
九つの頃と同じ声をあげて泣き ....
おとなになること

もう学校に行かずにすむこと
(学校のセンセイを除く)

お中元とお歳暮をもらったりあげたりすること
(バレンタインデーよりも重要になるかも)

おせち料理の黒豆やひ ....
君は控えめに微笑む

今僕がここで笑ってもいいのかなって

君はそぉっと思いやる

おせっかいにはならないかなって

まだ

子どもの大きさしかない君は

その内側で

広 ....
夏を飛び越えてゆく
あの雲を焼く

それは炎ではなく
蝉の声だったりするのだ

蝉よ焼き尽せ
雲を鳴き尽せ
ばっさり斬り落とした短い髪に
唖然とたたずむ
 (なんか、めんどくさくって
照れたように君が笑う
右の頬を隠して

僕の知らない君の夏
正しい折れ曲がり方なんて
よく分からないけどさ
 ....
夕立にぬれた雫で
木々が深く息をしている



この道を歩いていたら
貴方の事を想っている

貴方に名を教えた花は
今年もまた咲いている


言葉を募らせた秋も

歩み寄 ....
 

なぜだろう
わたしは眠っている

世界はこんなに美しいのに

なぜだろう
わたしは怒っている

こころはとても暖かいのに

なぜだろう
わたしは歌っている

ひとり ....
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