他人に優しいって事は
自分にも優しいって事かな
君に優しい顔を見せるたびに
僕は自ら犯した罪を
古いものから順に消し込む
過去に犯した罪を贖う為に
君の気侭な振る舞いにも優しさ ....
入眠
夜を行く 夜行列車の端から端まで
眠れないという あなたの背中を
私の恋を知る 二年の黒髪で覆い尽くす
やがて 足が滑らかに滑り落ち
月の無い夜を 黒豹と翔け行く ....
付け足されてゆくことがあって
それはとても
喜ばしい
差し引かれてしまうことがあって
それはとても
痛ましい
あなたの暮らしは
わたしの暮らしでもあり
わたしの途は ....
冷たい砂浜に、誰か
体で泣いている
空生まれの灰が沈んできて
波へ死んできて
折り畳まれてゆく、その灰の
海はノイズだ
今は、眼を閉じて
耳だけの ....
夜の更ける頃
君の身体から
今までに聞いたことの無いような
音が聞こえてきた
安らかに君は君の中で
溺れているのかもしれなかった
+
縄跳びの回数を
数え間違えて
少女はずっ ....
眠りたくとも眠れません
時間をつぶす術を忘れてしまいました
眠りたくとも眠れません
明日は用事があるというのに
眠りたくとも眠れません
飼い猫は気持ちよさげにねてい ....
化石を拾う
改札口は静かで
足跡ばかりが通り過ぎていく
ぼくはそこで案山子になっている
へのへのもへじ
通り過ぎてく人に
顔は何気にそう書かれてしまったけれど
何か無限のようなかなし ....
writeと書いてあるボタンを押したら
全部消えて真っ白になった
よく見るとwriteではなくwhiteだった
なるほどそういうことだったのか
つまり世界はそういうふうにできていて
ひと ....
何時ものように口ずさんだ歌は
受けとめてくれるはずの
君の笑顔をすり抜け
秋の日の溜め息となる
少し言い過ぎたのかな
でも一度口にした言葉は
もう取り消せなくて
気まずい思いを残 ....
薄暗い軒先で
植えてもいないのに咲いている
高貴とは程遠い
紫の嫌な匂いを放つ花を
じっと 見ていた
「毒に彩られた花やね。」と教えてくれた
少女の丸くかがんだ背中から
....
歩き疲れた素振りを見せず
意固地なくらい背筋を伸ばして
灯りの少ない舗道を歩けば
月の兎と靴音だけがついてくる
無感情に道程を辿り
行く手を遮る列車を見送ると
何故かしら
乗りそ ....
生足は季節のアンテナで
感じる微かな蠢きを捕らえては
白い小箱に忍ばせる
真夜中のブランコ
揺れる君のくるぶしは
季節はずれのアンクレット
楽しかったはずの映画も
楽しみだったはずの ....
影を切り絵にする
凍てつく月夜
わたしの秘めた暗闇を
湿った地面に縫い付ける
月をみたか
わたしには
眩しすぎる
視線をゆきます。
ひっそりとした
鋭角な色のない
告白にも似た存在の道
とぎすまされた意志の果てには重く輝く種子が宿る
涙で
洗われた深い瞳
そこに秘密を映す
答のない ....
宇宙は極上に澄んでいます。
美しい漆黒に漂う、
つやつやした青色の星は
エイリアンの観光名所になっています。
月から地球を見るのが
最も美しいそうです。
宇宙は ....
「頑張って」
という言葉は
どれほどの人を勇気付けて
どれほどの人をだめにするんだろう
そんなことを考え出すと
もういてもたってもいられなくて
ただ今までじぶんはなんて在り ....
メロディー譜を投げ捨てて
言葉だけ拾い集めた日
音に乗せる必要なんか無いって
私にはこの言葉一つあれば良いって
頑なに信じていたから、夜明け
夢だってあって
絶望は少しずつ箱に詰め ....
未知なる明日
怯えていては 眠れない
信じろ 信じろ 信じろ
多くの犠牲で今の僕はある
あやまちもたくさんしてきた
だけど
苦しくとも生きていかなければならない
....
インターホンが壊れてしまって
不在票ばかり、溜まってゆく
ドアをノックする手を
誰も持たない
再配達を
今日は頼んだから、
夕暮れにつづく時刻に
言い訳を抱えて
ドアの内側に寄 ....
空は赤い
歩いていても
泣いてなんかいない
恥ずかしいからではない
憂鬱だからでもない
たぶん幸せ者で
その幸せを一歩一歩
ふみにじっていっている
そうして家に帰り
笑いなが ....
葉擦れの赤錆は
はじめは
軽い混入だった
冷たい赤い陰影を増してゆくのは
葉擦れの色として微かに現れた感情の
冷たいことを、赤いことを
葉が何度も抱擁するからだ
それでも ....
死んだように
眠る私を置いて
私は遠くへ
うつろうままに
残された私のまぶたに映るのは
羊水の中から確かに
こちらを見ている何か
それは意思をもって
眠る私のまぶたに
朱 ....
君の目の奥に
ひっそりと存在する
暗い淵に
気づいてしまうことから逃げた
ごめんね
ポーカーフェイスに甘えて
僕はどうしようもないくらい、コドモだった
君がいなくなってから
....
新しい 朝だ
死んだ 友人の 憩い
雷雨が 恐れを 抱き
死んだ 両親の 憩い
新しい 夜だ
死んだ 子達が 笑い
棒で 何度 殴られても
私は 恐れるものなどない
....
入ってはいけない 穴 に入ったから
前世の 執行人どもに さび付いた槍で突付かれてしまう
落ちてはいけない 穴 に落ちたから
現世の 追跡者に 必要以上に追われることになってしまった
....
産声をあげた その日のことは覚えてないけど
おそらく 親は感激していたのだろう
母は何度も僕の手足の数を数え
十本づつあることを確めていたらしい
月日が経ち理想の世界から遠 ....
頭の中の糸が絡まって
記憶が擦れてゆく
あの日の笑顔さえ消えてしまう
このままでは――
動けなくなった体でも
瞳に映る景色だけは鮮明で
キミの涙が零れるのが見える
僕は指を動かす事さ ....
涙は
流れることを許されず
瞳にとどまっていた
雨が
かわりに泣いてくれたので
辛うじてプライドを保っている
物語は
最終章を目の前にして
頁を閉じられた
栞を
....
正義 と 言う 旗 を 掲げて
悪 を 殺す ん だ
権利 も 秩序 も
正義 に かかれば
ただの レッテ ....
折れ曲がったあなたの身体を
まっすぐにするのが
私の仕事
あなたは
あなたの意志を持たない
あなたの影になってしまった
その瞬間
私たちは知ることになる
私たちが
実体と ....
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