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小さな虫を追いかけて
少年がどこまでも走っていきます
窓の内側でも外側でもなく
ガラスの中に広がる草むらを
何も持つことなく
私はいったい何時
ガラスの中から出てきたのでし ....
私は膝に子猫を抱いている
二日前に死んだ子猫
それはすでに腐敗している
私の腕からその猫の肉体が垂れ下がっている
私は歌を口ずさんでいる
題名が思い出せない歌を ....
まだ疼く頬を
撫でる君の白い手が
現を奪う接吻の間に
消えてしまわぬよう
握る手を探す
夢を見ていた
禁断の実を食べたのでした
僕らはよく笑う高校生でした
僕らはよく悩む高校生でした
ああ、でも赤い実を食べたばっかりに
帆船の入った瓶のように
海は小さくおさまって
ポケットの中で眠 ....
雨の日、
すべりだいで、
世界のはんぶんを洗い流した
もうはんぶんを
ランドセルに入れたままで
鏡のトリックで
あくびだらけの教室から
抜け出してやろう
外には黄色い球体が
呆れるほど輝いている
音速を超えた蝉の声
鼓膜を激しく貫いて
今日という日は
未来永劫来ないか ....
痙攣する瞼に夢をみる
青い空を首が痛くなる程見上げて
海を泳ぐ魚になる夢
私は胸を撫で下ろして
小さく息をした
エラ呼吸は難しいと
肺呼吸で良かったと
....
虫取りの子たちが
アジサイの茂みに見え隠れする
夢の色を追いかけて
おおきくなってしまった
ぼくは
その動きをなぞることができない
思い出して叫んでみても
ブランコの揺れと ....
煙突と空と煙が同じ色
風と埃と夜と泣き虫
30メートル上に赤い目光る
ふたつ光る
60メートル上に赤い目光る
これもひとり勝手に光る
そのうえに虹
夜なのに虹
高架橋のところまで
電車を見にいく
生まれる前から
そうすることが
決まっていたように
電車が来るのを
待っている
死んでしまったら
できな ....
今朝は朝から革命の鐘がうるさくて
もっとゆっくり眠っていたかったのに
カーテンを開けると町はすっかり革命気分で
至る所で革命が行われていた
昨日まであったはずの赤いポストには
何かの象徴のよ ....
それ以後、鉄塔に上ることは不可能
となった。首を吊ったコンビニ店長は、一晩中、
風に揺れていた。その姿を ビニールが
引っかかっているだけと、近所の人はやり過ごした。
壁を塗り直すだけでは ....
渡りゆく空がなくても
鳥かごのツバメは夏が行くほうを見る
草ひばりの声を聴きながら
日に当たる頬の熱さは
夏をしっかりと覚えているのだが
頭を垂れた稲の穂が首を振る
入道雲が突然泣 ....
数センチの隙間から見る世界は、私にとって
とても、それは、とても薄明のような光景で
時折過ぎてゆく、子ども達の声が不思議と、
風船を飲み込んだようなこの喉に響くのだ。
枕元には、し ....
かもめが旋回する、その
時間、いかなる
記憶もなく、きみは
目を覚ました、朝
くだけていった、多くの
もの
君らが私の年輪を見遣る時には、すでに私は切り倒された後だろう。
残された私の上で、手を合わせるのは誰だろう。
そこから見える東雲は、成功と報酬に溢れているだろうか。
それとも人間らし ....
黄金に実った麦畑は
刈られるのをまっていて
私は
ずっとこのまま
黄金でいてほしいと思っていた
時は止まらない
緩やかにすることはできても
そう信じたい
その術を想い描いても
急 ....
もともと
昏睡状態にあることに
無自覚なだけだったのかもしれない
スクリーンを流れていく
大きなもの
あれが大地だろうか
空中ブランコに
さかさまにぶらさがって
考えている
ねえ
世の中のくだらないことごとに
ひれふすことはないよ
何故みんなが笑っているかわからないのに
わかると思いこまなくていいよ
秘密の石の人形を恥じることはない
たとえそれがどんな ....
遠い星
夜空
そこと僕の間に
音もなく流れ続けていく
気流
それは
目に見えない
ここからはわからない
想像を絶する
過酷な空の営み
すべてを凍らせるような温度で
流 ....
それはきっと嵐の夜で
鈍色の雨に混じって
空が降っている
寒いね寒いねって言いながら
冷たい体を寄せ合って
天井の無い朝を迎える
硬くなったパンを分け合って
薄いコーヒーを ....
ずっと昔の話だけど
花火を見たんだ
花火は綺麗で
じっと見てたんだ
そしたら
ばばばばばばばばば
っていっぱい光ったら終ってしまった
でもまだ一つだけ
赤く光ってたんだ
親は星だって ....
金魚鉢
の中
光る鱗の澱
夕刻の斜光
き、ら、きら、ら
三叉路に走る
車輪の陰
遠くで鳴る船の警笛
橙の手のひら
光る鱗の
き、ら、きら、ら ....
口に含んだあめ玉色の
建物や生き物が
こちらへおいでと
手招きをして誘うから
さぞ 甘い夢を
見られるのだろうと
振り返りもせず
あの子は
駆けていってしまった
あざやかに
裾 ....
あ どこで鳴っているのだろ
悲しく響くパンの笛
空の上から高く低く
木々の間から遠く近く
誰が吹いているのだろ
森に木霊するパンの笛
謎 謎 謎の響き
僕はその日いつまでも
謎の響きに ....
空に氷が張っている
その向こうは凍っているのでよく見えない
諦めて僕は瞼を閉じる
いつの間にか僕の眼にも氷が張っていたので
閉じた瞼がくっついて開かない
11月8日
....
きらきらと
最後の光を放ち
優しい太陽が
落ちていく
にこにこ
にこにこ
笑顔の人々を映して
最後の光が
消えていく
だから
きっと
もう
何も見えなくなる
枯れ葉に眠る蛾
湯の底の丸薬
動かぬまま 呑みほされようとし
はばたき
のがれる
長い光の筒のさき
ずっとひとりを狙いすます
遠くにじむ銃と引き金
灯と灯のふるえ
....
台所に座り込み
勝手口から空を眺めると
柿の葉が広がっていた
とても濃い緑
よく耳を澄ますと
じいい、と通奏低音みたいな
音がする
理由はわからない
たぶん夏の名残
もうすぐ ....
夕涼みに飽きて
地平線へ君を沈めた
ぬくもりと共に沈めた
幾つもの日々を沈めた
夕涼みに飽きて
突き抜けた夜の先を想った
ぬくもりを求めて
冷えた心に息を ....