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故郷の僕が糸電話で
「お元気ですか」と尋ねる
それから
口にあてていた紙コップを耳に、
耳にあてていた紙コップを口にあて直し
都会の僕が
「元気です」と答える
そんなことを
終 ....
 
 
カザフスタンから来た
優しい女性看護師が
僕の脚をさすりながら
もう痛くないかと聞く
もう痛くないと言うと
良かったと嬉しそうに言う
カザフスタンはどんなところか聞くと
日本 ....
 
 
朝、食卓の上に
動物園があった
雨が降っていた
動物たちは雨に濡れて
毛が硬そうに固まっていた
わたしは雨に濡れないように傘を差し
立ったままトーストを食べた
動物たちはわた ....
 
 
世界の果てに
ベッドがひとつ
ぽつんとある
父が横になっている
わがままばかり言って困る、と
母から連絡を受けた僕が
その隣に立って
父を怒鳴りつけている

親に向かって ....
 

 
父はサボテンでした
とげはありませんでしたが
サボテンでした
水を蓄える仕組みがあるわけもなく
少しの水では生きていくこともできませんでした
ましてや荒野に一人
じっと立っ ....
 
 
月工場で
おじさんたちが
月を作っている
その日の形にあわせて
金属の板をくりぬき
乾いた布で
丁寧に磨いていく

月ができあがると
ロープでゆっくり引き上げる
くりぬ ....
 
掌は舟
温かくて何も運べない
体液を体中に満たして
今日も生きているみたいだ
塞ぎようのない穴から
時々漏らしながら

階段に座って
ラブソングを歌ったり
駅前の露店で
プラ ....
人体模型は海を見ていた
筋肉の組織も内臓も剥き出しなのに
それは自分の何をも語りはしない
こうしていると
かつては本当の人間だったのかもしれない、と思う
電池の切れた玩具を
大事そうに ....
 
 
海賊が泣いていた
アスファルトの水たまりを見て
海を思い出していたのだろう

海の歌を歌ってほしいと言うので
何曲か歌った
関係ない歌もいくつかあったけれど
気づかれることは ....
僕は男だから
産む痛みを知らない
同じくらいに
産まない痛みを知らない
痛みなんて知らない
ここは戦地ではないから
僕はあなたではないから

幸せになる方法を知らない
幸せにする ....
交差点の向こう側で
指揮者がタクトを振っている
その動きに合わせて
たくさんの仔猫たちが
次々に海へと入っていくのが見える
カタクチイワシの群れが来ているのだ
胡麻漬け
卯の花漬 ....
秋の夕暮れに
夕日がふたつ

赤く熟した
太陽と
柿の実と

風に揺られて
見分けがついた
さきさんのたもつさんおすすめリスト(12)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
都会図鑑- たもつ自由詩512-7-22
カザフスタンの看護師- たもつ自由詩912-6-3
長電話- たもつ自由詩810-5-8
世界の果て- たもつ自由詩23+*10-4-30
童話(サボテン)- たもつ自由詩910-4-7
月工場- たもつ自由詩3809-4-7
空の匂い- たもつ自由詩4308-10-29
記憶- たもつ自由詩2408-4-14
大晦日- たもつ自由詩1507-12-31
花束- たもつ自由詩3507-2-28
カタクチイワシの仔猫たち- たもつ自由詩16*06-10-1
夕日がふたつ- たもつ自由詩805-9-24

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