五月の地表を離陸したこいのぼりたちは
太陽から吹いてくる風を上手い具合に活かして
素晴らしいスピードで重力圏を離脱した
それはこいのぼりたちにとって
反乱であり革命であった
こいのぼ ....
娘が
私の誕生日にプレゼントをくれた
そういえば
最近娘とは会話もしていなかった
細長い化粧箱
包装紙をやぶいて中を見ると
ドライバーが一本入っていた
娘は
私がそれを ....
金物店の前の交差点に
洗濯機が横たわっていた
横断中に大型の車にでも轢かれたのだろうか
歪に凹んだ体や散らばった部品に
朝いっぱいの陽射しを浴びて
きらきらと言葉のように光っていた
生 ....
噴水のそばでは
アビリティーが無効になります
仕事の話はやめましょう
大声で電話しながら歩いている人
あなたの内側を掃除したい
2004年11月23日制作の上記「噴水の話」から、昨 ....
僕は生きているはずがない。
だけど、
いつもの朝焼けの色が、僕の心を負かすから。
生きているのかもしれない。
閉じた瞼に、浴びられるだけの赤を浴びる。
太陽からは血の匂いがする。
....
朝の七時に電話が鳴るのは
たいていの場合
良い報せではない
+
受話器の向こう側で
母が
お父さん、昨日の夜、シンキンコーソクで、
と
妙に軽やかな声で言った
....
寝たきりの祖母が一週間の大半を
天井を見て過ごすことがかなしい
私の顔も忘れた瞳が
時にきれぎれの記憶を思い出す
その輝きが
新しく覚えることがらを無くしても
ふと寂しさを宿して見える ....
この寒空の下では
頁を手繰る指も冷たかろう
頭の中で誰かが囁いた
ビジネス文書術 という本の
最終章
まもなく通勤特急が通過します
黄色い線の内側へお下がりください
....
かみさま って
ひらがなで書くのは反則だ
世界 ってやつをひっぱり出すのも
ルール違反ってことにしよう
そこから
おれたちはまず
書きはじめなくてはならない
雨上がりの
濡れた ....
せつない
せつないよ
せつなさのなかで
火が燃えているよ
せつなさのなかで
ロケット花火が
飛び交っているよ
ああ
戦争だ
おい
おまえら
戦争なんだよ
....
オープニング
どこまでも行く
つきあたりを右折
空港がある
教師のAさん(仮称)は空港を黒板に板書していく
重要なところは赤いチョークで
重要だがそれより重要度の低いところは黄 ....
(たくさんのパルス、)
脈拍が歌う
それは波紋であり、
いのちだ
水溜まりと等しく
空を映した鏡と、同じ
青や赤をまとった
一筋の糸
(たくさんのパル ....
ジャケットを着ていこう
今年初めてあなたに会うから
いつものカーディガンでなくて
高級品ではないけれど、お気に入りの
ベルベットのジャケットで行こう
心にもジャケットを着ていこう
変に ....
安っぽいイルミネーションに彩られた
クリスマス・イヴの東京の街角
元・恋人に貰ったiPodから
アクセル・ローズの悲痛なシャウト
全てはもはや記号に成り果て
ウォーホルもレノンもコバーン ....
男の人が白い塀に寄りかかってる
ぼんやりした格好で
衣服には模様のようなものがついている
何をしているのか聞くと
誰かの夢の中なので勝手に動くことができないんです
と言う
かわ ....
何がプレミアムなのかも分からずに
モルツを口に運びます
くだらない形容詞が世の中に溢れて
肝心なことが言えずに今日も終わる
たった五文字の言葉の中にも
行間が絶え間なく滑り込んで
最後 ....
冬の波寄せては返す寒さかな
本当はサンタの正体知っている
熱燗に助け求める寒き夜
薄い網戸の向こう
何かの割れる音がする
今日は朝から寂しいものが降っているから
話しかけるみたいに一日を生きたい
消えていくシャーペン工場で作られた最後の一本が
同じ価格で店頭に並ぶ ....
おれはきっと
あんたが死んでも
泣いたりなんかしないし
この先二度と
あんたに会えないとしても
たぶん平気だ
*
たぶん ね
*
実際のところ
ほと ....
三輪車は行く
何も知らないまま
道が道であることも
わからないまま
どこまでも
たどり着く場所があることを
想像さえ出来ないまま
ただひたすら行く
なにごともおそれず
やがて神に出 ....
逢いたくて逢いたくてまだ春遠し
マラソンの人に手を振るコスモスよ
サヨナラの匂いが混じる冬の海
寒くても温かくなる冬の恋
冬空に穴あけて飛ぶハワイ行き
枯葎命の息吹弱りつつ
自転車はその肢体を空気の隅々まで伸ばし
僕らのささやかな会話は言葉を放棄して
水の海になってしまった
沖へとゆっくりこぎだして行く
すでに失ったペダルを懸命に踏みながら
陸のいたる所では ....
私はあなたが不安です
あなたが不安だと言っても
あなたを信じていないとか
そういうわけでは決してないのです
私は私が不安なのかもしれないですね
私は私を疑っているのでしょうか
....
途切れた旋律
耳を塞ぐ
暗闇の中
声もなく君を呼ぶ
反響する残像
離された手は
鮮血を欲す
あてがわれた切っ先
鈍色に光る月
反射する斜面
饒舌な沈黙
額に飾 ....
いつか彼が
窓枠にもたれかかって
初秋の移ろいを見つめていた
そして手を振った
優しい時間があったこと
思い出していた
雨が降り続いていた
ぱらぱら
窓の向こうで泣いていた
昨 ....
美しが丘5丁目の
Y中学校脇の坂道の頂上で
朝日を、夕焼けを、月を、
もう10何年も眺め続けた
朝日は時に足取りを重くし
夕焼けは時に涙を流させ
月は時に孤独を連れてきた
それでも今日も ....
布団から離れられず
寝て過ごす
毎日
あなたの好きな
オムライスだって
作りたいのに
そんなささやかな
自由さえなくて
わたしは ひっそり
涙を流す
だけど
....
サイレンがゆく
都会ではあたりまえの
田舎ではとてもめずらしい
いのちに象があるならこの音だろうか
いのちが鐘の音であった昔のもっと前から
一羽がはばたいてあとはただ盛り上がるだけの鳩の ....
どんなに鮮烈な映像も、感情も
あとからあとから
注ぎたされる
とろりとした夢水に
輪郭を曖昧にして
とらえようとするほど
淡くまぎれてしまう
過去と未来の、あるいは
前世と来世の狭 ....
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