二つの空に二つの雲があった
風が吹けば波打って
雲に霞が立ち込めた
二つの空に二つの月があった
大気の澄み渡る晩には
無限の星屑が月を囲んだ
二つの空に二つの陽があった
全ては朱 ....
わたしが詩を描く時
そこには何も在りはしない
澄んだ青空に浮かぶ白い雲
ぷっかり浮かんだまぁるい真昼の月
春を告げる鳥の囀り
発情期間際の赤ん坊の泣き声のような猫の声
アスファルト ....
俺はこの島にあって
風のまにまに漂う
俺の声を聞いたら
おまえはもう自由ではない
そこにはない雨のしずくが
おまえの頬を洗う
足が重いと感じたら
そこに俺がいるのだ
....
墓の裏に回る
墓碑銘
一文字ずつ読み取る
故人も知らぬ名前の羅列に
隔たりの強き世界の境
墓の裏に回る
....
眠っている、舟の
漕ぎだすその先の朝が、
眠っている
イメージが形になっていく、その
次の瞬間に
雲は切れ、空の裏側にはおそらく
比類なき明日が
ただ 立っている
としても、底 ....
深く深く眠りについてよ
記憶の底に辿り着いたら
その扉を迷わず開けて
世界の終わりが見えるよ
小瓶の中の錠剤が零れ落ちても
目を覚まさないで
旅立ちの朝
小鳥のさえずりが聞こ ....
その時に何を考えてるかなんて
そんな野暮なこと聞かないでよ
あたしはただ数を数えているだけ
何も考えないし
あたしは眠らない
どんな男でも
眠っている顔だけは
妙に愛らしいこ ....
溶けない絵の具で描くように
毎日が色を重ねていく
とうに恥じらいをほどいた僕には
全ては取り乱す間も無く
宙の中に起きているようだ
それでも毎日は
すれ違い ....
たとえるならば
練炭の赤
たとえるならば
灯火の青
たとえるならば
えぐられた胸
たとえるならば
雨に満つ海
見つけてしまった
キャラメルの箱
木漏れ日がもしも零れて落ちたなら
享けとめるためまつ毛をカール
ハリウッドの女優気分で歩こうか秋色緋色の絨毯の上
空高く群れる羊を追いかけて風の尻尾を捕ま ....
その
ひぐらし
アコーディオンがたからもの
ヒトの喝采むさぼって
どこふく風のねなしぐさ
ゆらりと浮世をやりすごす
あれは
キリギリスとしんせきだったかねぇ
そ ....
アゲハのハネは夏の欠片
土の上にパリン 零れる小宇宙
落ちていたハネなんですけれど
日にさらされてか
ガラスのように かわいていて
リンプンは星屑しゃらんりん
本体は見あたらなくって
....
Tシャツの裾おもいっきりひっぱってさ 君を振り返らせるの すき。
子どものままの君がじゃれるの すき。
少しだけ残る夏の香りをさ 目を瞑ってかくにんするの すき。
カーテンの裾が揺れ ....
パーティーは散々だった
おやすみ、のあいさつの方角へと
だいだい色のシロップが
ゆっくりと流れて
しだいに
粘性を増してゆく、
夜の
水の底で ゆうべ、まき散らされて
わたし ....
わかれみち夕陽が君を支配する今日ほど夕陽を妬んだ日はない
落胆と転がる小石と空の雲蟻の巣すずめ手をつなぐ最後
焼け爛れ燃えゆく西日吸い込めばわたしに残る君は焦げるか
ままごとの続きと ....
寝顔だけは
どんなことをしても
取り繕えない
赤ん坊も
うら若き乙女も
お髭の立派な紳士だって
枕の上ではあどけない顔をして
お医者さんも社長さ ....
沸かしている。
こんな朝には、
カフェインが欲しい。
紅茶が飲みたい。
紅茶は飲めない。
願を懸けているから、
飲んではいけない。
だから、
珈琲を ....
私という曲線をなぞる
薄っぺらな影が
このまま溶けてしまわないように
望んではいけない
夜を越えてしまった
私ははしたない女ではなかったかしら
未練がましい女ではなかったかしら
....
聞こえるはずもない
花のつぼみがひらく音
それが優しい歌に聞こえて
蝶がちゅるりと
その花の蜜を吸うとき
それが優しい歌に聞こえるから
ぷーんと飛んできた蜂が
そ ....
陽は斜めに、
影は長く伸びる。
あの足跡まで、
もう少し。
ようやく影が、
足跡を捕まえた時。
旅人は、
部屋を出た後だった。
カーテン。
ふ ....
飛散したガラスの破片が
危ないものだなんて知らなかった
キラキラとひかって
みんながとても喜ぶだろうと
そう思ってた
我慢して
頑張らなきゃならないんだけど
我慢は
息を止めてるみたいに苦しいので
プハッとしたくなる
どちらかというと
吸い込んでから止めるほうが
楽なような気がする
吐いてから止め ....
あの頃、君に告げられなかったことを今
***
ねぇ、君
冷やし中華を誰よりも早く始めたいの、とはりきる君の姿が僕は好きだったんだ
ねぇ、君
扇風機の首フリに合わ ....
僕は奈良公園で鹿の角をにぎっていた
同じころ
父は帰りの電車のつり革をにぎり
母はスーパーで安売りの大根をにぎり
妹はベッドの上で携帯電話をにぎっていた
隣の部屋の夫 ....
ねぇ、知らないうちに
ねぇ、正確なリズム
ねぇ、心臓も
ねぇ、わたしのからだ
海みたい
潮の満ち引き
お月様と一緒
28日周期で
満月のわたしは血だらけ
新月のわたしは眠 ....
花を差し出されたら
黙って口に含む
蜜を吸う
疑うという言葉は
知らないふりをしなくてはいけないルール
ねえ
毒って、甘いんだってね
*
追いかけられるの ....
わたしがいなくなって5分後の世界
相変わらず
交差点は混んでいて
ストップランプは
シンクロしてて
大型ビジョンが
めまぐるしく 変わって
新作モードは
ガラス ....
私は一度も死んだことがありません
だから、よく解らないのですが
静かに息を吸いながら
あなたの詩をゆっくりと読みました
ゆっくりと
もう一度と言う声にうながされ
残照の黄色の花に気 ....
羽音だと思ってたら
薄布のカーテンをふるわせて
飛びたいよう、と
窓が
泣いていた
わたしがあんまり
窓の目で
空を見るから
ガラスの表情は
いつのまにか、曇って
月の形に ....
夏の終わりの淀川の河川敷の芝生は
生臭いほどの濃い緑に染まっていて
月曜日だというのに
真っ昼間からビールを飲みながら
バーベキューなんかやっているロクデナシどもが
ロケット花火を打ち上げて ....
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