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風景が振りむいた
きりきりと ただ一度だけ
冬の 椀の 上
木立があった
冷えた池も あった
あなたが いなかった
振りむいた
震えた 溢れた ....
青い 空に
梢がしがみついている
かなしいことは いつも
庭の木の柿のようにみのる
世界の端のほうに 僕は坐っている
中空にほうった
ボールが手元に戻ってくるように
一日が 終わった
熟れた光が実をつけては
落ちていくのを
潰れるのを
目で 追っていた
銀の線を引いていく飛行 ....
何も言わない
読点のような皿を洗う
燃え終えた数本のマッチに
年々似てくる
僕の記憶
日をうけて
影になっていく 木
振動する沈黙 かなしすぎるほどに
決して ....
赤い葉が 二、三枚
枝に残っている
ここに
光が建っている
秋 水辺にいるみたいに
薄く 目を開けて
飛沫を 頬に浴びて
日の光の血痕
かさなった眼が ここにない
熱い空 道すじをかすれて
私たちの歌は時間の
壁の裏におちた
通り過ぎて
あなたの胸に
影になってから
はじめて言葉がきらめいた
海老蔓の秋 はじめから 記憶の形をして
割れた幾何学が
積み上がっていく夕
雨のような寂しさを身にまとうひと
抽斗は
開けられることはないのだろう