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山裾の丘陵地
総合病院の裏出口から
人通りすくない小道を往くと
閑静な民家の中にログハウスも立ち並ぶ
金網張られる路端に
あかるんできた雨空をあおぐ朝顔が
緩い風の懐であ ....
急な傾斜の小径をのぼり切れば
大きな旧居の横手に広がる
段々畑が見えてくる
金網のフェンス越し、
至近距離で咲いているアザミへ
iPadのカメラを向けてみる
うつし世の碧 ....
パサパサの餌をたべて
噛み砕けども詩にはならず
烏輪の光を受ける郷も今宵、雲裏から出ぬ草はらで
落ちてるひらがなを拾いあつめて
ぴん とお耳を立ててみる
日照りつけて
前方に霞む百日紅には
二匹のクマンバチ
ふと足もとを
蜻蛉のちぎれた一枚羽が
微風に 晒される
古道の低い石積みの傍、
生い茂る樹木の根元で
....
{引用=ハイヒールの足許が男の鼻先を嘲笑う
「欲しければ尾を振ってついておいで」
街の角で ふと女の姿が消えた
「欲しければ、そこで涙をお流し」}
※
天上か ....
日は長く 妙に生暖かい風が出て
濡れながら歩く大通りを
脇道へ逸れると
連なる飲み屋や風俗店看板
そこに女が居るのをみた
薄いスカートは
夏がとっくに通りすぎた様に
....
通勤電車でふと絡みあう視線
作業着姿で伏し目がちに座っている
その人の 汚れた軍手をはめる手に
真紅の盃
みずみずしい酒の香のなせる業にして
白髪で皺きざまれる{ルビ貌=かお ....
「な、なっ、これ。あたし持って帰って
味噌汁に入れるしラップで包んどいて!」
友人へ手渡す 小さなまな板で半等分にした
えのき
玄関開けた沓脱場から上がってすぐ傍、
ガスコ ....
大根 里芋 金時人参 南瓜 蓮根
厚揚げを 塩加減に悩みながら
白く煮て
干し椎茸 牛蒡 蒟蒻
は しょうゆ味で黒く煮る
重箱のおせち料理は作らないけれど
昔 家族で過ご ....
テイクアウトのピザを
たらふく食べ
飲みすぎた赤ワイン
炬燵で寝落ちし
ふと目覚める 耳の底の音だけしかない
深夜
空ビン洗って
ベランダの収納ボックスへ入れる音 ....
加茂川べりに
あの人が佇んでいる
錯覚だとは
電車の中で気がついた
冷たい舗道に降りてから
しっかりと足早に歩きすぎながら
それでも後ろを 振り返ってみたかった
....
薄ら陽を
追いつつ鉢を離れ得ず
小さき金魚の褪せし思いして
胸の底 暗く重く
ちろちろ火の燃え続ける
ほのぼのと
開きそめし季節のすぎて
髪洗えば抜け落ちる束 悲しきを
湯舟浸かり両の手に 抱く乳房
秋の晩
桐の葉に 雨が降れば
涙なく 声なく
唯一人
流るる窓の滴に心あてなく さまよい出でる
あなたが何処に居ようと
わたしが何処に居ようと
生命だけしか上げるものが ....
「今日」
足許が 冷たい
濡れた路面に浸む夜の訪れ
こんな日も
あるのか
早く帰って お風呂にでも入ろう。
....
リビングで 朝
外の光がもれこんでいる廊下の床に驚いた
玄関が 開いているのだ
シルエットの人影
何故だかすぐに 母だと分かった
どうして 敷居を跨がないの?
....
ものうい口づけの時
真昼のカーテンが そっと身をよじらせ
触れ合った歯の小さな音をも
ききのがさない
ある時
生命を捜し求め
悲しい広さを見い出した
貞操を否定す ....
貴方と逢っての帰り
雨雲が 電車を追うその先
西山へ落ちかけた陽が鮮やかに薄紅で
大きい
稲の穂先に むせながら
田の中を歩き
やがて深い竹林に入った時
....
波が かすかに鳴りながら
ふともらした悔いのことばを
嘲笑う
そう 確かに
人を愛したことを悔いるなんて
つまらないことだった
憶い出させてください
....
京都駅構内のアスティロード商店街を抜けて
おもてなし小路を行くと連れの彼女が独りごちる
「うわ、六百十五円やて!」
何事かと 彼女の視線みると
老舗珈琲店の店先ショーケースにはり ....
{ルビ十重奏=デクテット}な鈴虫の競い鳴きに
飲んだアイスコーヒーのグラスもそのまま微睡む
日暮れ前
曇りならば昼間でも鳴く
それは{ルビ八重奏=オクテット}から{ルビ七重奏= ....
ビルの谷間に皐月風
それは歩道の正面から運ばれてきた
若い男の声だった
パパなお前のキモチ分かる。分かってるから今日ユラちゃんに謝ろうな。
ギョロリとした目に たらこ唇
....
人なんて 一緒に食事してみないと分からない
お酒を飲める人ならば
呑ませてみないと分からない
いつもそう 思っているが
同僚の彼女は呑ませてみても分からない
生ビール中ジ ....
泉涌寺の
楊貴妃観音
のお堂の前に
春の日が暮れて
ほのぼのと薄く紅
開きそめて囁く枝の
下に 微かな響き伝え
息づいている空気が在る
遠い春雷の 音ない震え ....
気持ちの不安で落ち込んだり
あるいは高揚感に落ち着きの無くなってしまう時
深呼吸する
そして私はシングルポイントの六角柱水晶を握る
掌の柔らかい部分に三辺の角が当たり心地良く
....
会社では広大な敷地内を 車と自転車が往来する。
歩行者には「さわやかあいさつ通り」と名称される
アーケードの歩道が設けられている。
東の正門で守衛室に社員証を提示しても
配属先の ....
自宅でお留守番するウサギは
あちこち破れたからだを丁寧に縫い繕われた
ぬいぐるみ
社員食堂で晩ご飯を済ませ帰宅する暗い空間
蛍光灯が点くとよろこぶウサギに
ただいま を言 ....
季節風が未練がましく吹きつのり
北野天満宮の梅苑に白梅が咲き始めた
春が来るのか
昨日よりは
今日よりは
明日よりは
理想の 胸に馳せめぐり浄らかな人生を
描いて ....
花の時期を過ぎれば気にも止めないでいた
児童公園の隅にある
赤茶けて錆びた鉄の 大きな藤棚
敷かれた石畳に 風雨で変色したコンクリートの
ベンチ三脚
ちいさな葉が滴り落ちる ....
先週は半袖でいられたのに急に
風の冷たくなって
靴下も履いていない あの子は
三ヶ月くらいだろう
膝でリズム取る
まだ若い男
の揺かごに ぷらんぷらん
あの子のあんよ ....
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