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昨夜の夕飯に頭と骨だけ残して食べた魚が
ゆうゆうと空を泳いでいる
綺麗に身だけ食べられた魚のみが
泳げる資格を与えられるので
私たちは神経質に箸を使う
骨の魚にはもはや天敵もいないから
....
あの日
骨ごと断つ勢いで斬りつけた左手首に
病院のベッドの上であなたは
切り取った雲一つない青空を
私の傷口に深く埋めてくれた
重い曇天に覆われてる毎日の
奇跡的に雲が途切れた瞬間の
....
薔薇の下から
少女の唄声が聴こえる
庭の片隅に植えられている
その深紅の薔薇の下から聴こえる少女の唄声は
私にしか届かない
それが惜しいほどに、華麗に、時に遣る瀬なく
....
道の端に蝉が転がっていた
壁の影にひっそりと
炎天下の中へ這い出て
求愛を啼き叫んだおまえの夏は
一生が、
ここで終わったのか
あなたを思い出にするにはただ時間をかける
....
地上で最後に咲いた花には
目がありました
かつて生存したあらゆるものが死滅し
文明の残骸さえ塵になった地上で
とうとう最後のいのちになった花は
青黒い雨に打たれながら
薄汚れた白い花弁 ....
雑木林の奥の崖まで行く癖がある
そんな時に偶然見つけたのがこの教会だった
天井近くには鳥の巣まであるほど廃れていて
キリストは取り外されたのか
薄汚れた大きな十字架があるだけだった
軋む ....