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さざなみが産まれるところ
透きとおりながら
かすかに揺れる城が
月明りを映している

{引用=とうめいであることは
ない、ことではないよ
ないことにするには
醒める必要がある

} ....
静けさという音が
降ってきて
{引用=それは
大人に盛られた
眠り薬}
影という影が
今という現実の
いたづらな写し絵になる


いつまでも暮れてゆかない夜があった
小さな公 ....
透明な羽が浮かんでいた

透きとおっているけれど
それは無いということではなくて

小さなシャボン玉は
虹を載せてゆくのりもの
パチンとはじければ
虹はふるさとへ還る

ふいに風
 ....
うすい影がゆれている

くちばしで
虫をついばむのだけど
やわらかな影であるから
獲物はするりと逃げてしまう
 {引用=命でなくなったものは
もう命には触れることができない}
それでも ....
熟れた苺は
三温糖の甘さで身をもちくずし
林檎は
シナモンの香リを身にまとわせながら
北国の樹を忘れてゆくだろう

{引用=ずっと果実でいたいという純心は
換気扇のはねに吸われて}

 ....
きのうの猫のぬくもりや
おとついの雨のつめたさや

ずっと前
ぼくができたてだったころ
たくさんの小さな人が
かわるがわる座ってゆく
にぎやかさや

お腹の大きな女の人のついた
深 ....
竹の子の皮には
小さな産毛が生えていて
まるで針のよう
はがすごとにちくちくする
皮の巻き方は
妊婦の腹帯のように
みっしりと折り重なっていて
はがされたとたんに
くるりと丸くなる
 ....
冬のあいだに育った
ふわふわの毛に包まれてみる夢は
ねじ巻き振り子のようにかなしかった
(なんでアンゴラ山羊になどうまれついちまったのか)
けれど
春のひざしに
あたためられて
気化して ....
針穴に糸が通った遠い日から
ずいぶんいろんなものを縫ってきた
時には
縫われることを嫌って
ぴちぴち跳ねて
てんでに海へかえってしまう布もいたけれど

人の営みのかたわらに
一枚のぞう ....
よるになると
ぴい、と音が鳴る
この部屋のどこからか
耳を澄ませる
出どころを
さがしあてようと
眼をつむり
耳だけになってみる
飼ったはずはない
けれどそれは
とりのこえに似てい ....
わたしから切り落とされた白い手が
向こうで手をふっていたのです

交差点にはひっきりなしに
びゅんびゅんと雲が行きかうものですから
どうしても渡るきっかけが
一歩を踏み出す勇気が
つかめ ....
過ぎ去った時間の遥かさを
たやすくとびこえる色がある

枝葉のさまざまなありようは
忘れてしまったのに
あの日
落ちかかった滴のことだけを
覚えているのはなぜだろう
人生の岐路で
も ....
糖蜜工場が爆発したことによって
甘い蜜たちが
静かに街を流れ出しました
その粘度たるや
もう人の手にはおえない類のものです
アスファルトの上の蜜はそのまま冷えて固いかさぶたとなり
土の上の ....
昔昔のことです

「ソックタッチ」という商品名の速乾性液状糊のスティックがあった
糊といっても紙を貼りつけるものではない
靴下と足を貼りつけるものなのだ
ずり下がるという引力の法則に抗うこと ....
あの頃
きみはまだ産まれていなかった
着床しない
小さな種だった

人はなぜ産まれてくるんだろう
人はなぜ産むんだろう
いつか手ばなす命であるのに

わたしが
影も形もない頃
少 ....
青い空に
浮かぶ雲は
他にやることもないから
特別にゆっくりしている
なんの充実感もない
無益な時間を消費してるだけだ

一瞬は永遠につながっている魔法

雲よ

あなたは
い ....
糸をつむぐ
それはかつて
繭だったものたち
それを産んだものは蚕という虫
それを育んだものは桑の葉
それを繁らせたものは桑の木

ふるさとを発つ時
小さなかばんに
宮沢賢治の詩集と
 ....
透明な水槽の底
沈んで横たわる
短くなった鉛筆たち

もう手に持てないほど
小さくなってしまったから
持ち主たちが
ここに放したのだ

その体を貫く芯が
ほんのわずかになったのは
 ....
唐辛子を陽に干している

ワックスかけたてみたいに
艶やかだった彼女らは
日ごとしぼみ
くすんで
ぼやき
手をとりあって
しわしわになる
光の中で
そのしわは
小さな影を織りなし ....
冬めいて部屋に取り込む鉢ひとつ

冬めくも猫を{ルビ抱=いだ}いてミルクティー

くちびるが一番先に冬めいて

冬めいてなんの未練もない鳥よ

パソコンを切って冬めく夜を知る

手 ....
手にしていたのは
小さなひしゃく

星が消えた途方もない夜は
蛍を連れて

そしてたどりつく水源の
ほとりは

どこへつながっているのか
どこへもつながっていないのか

汲み上 ....
田中修子さんのそらの珊瑚さんおすすめリスト(51)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
水の城_- そらの珊 ...自由詩13*17-6-23
きつねつき- そらの珊 ...自由詩18*17-6-12
夏へ向かう羽- そらの珊 ...自由詩16*17-5-29
水辺の魂- そらの珊 ...自由詩19*17-5-20
五月はジャムを煮る- そらの珊 ...自由詩15*17-5-6
さいはて公園のベンチ- そらの珊 ...自由詩17*17-4-26
竹の子の皮をむく- そらの珊 ...自由詩17*17-4-14
アンゴラ山羊のみる夢は- そらの珊 ...自由詩14*17-4-8
虹色のさかな- そらの珊 ...自由詩14*17-3-29
よるのとり- そらの珊 ...自由詩23*17-3-24
信号のない交差点- そらの珊 ...自由詩17*17-3-10
虹色の滴- そらの珊 ...自由詩12*17-2-16
糖蜜の街- そらの珊 ...自由詩22*17-2-1
わたしたちの靴下はいつだってずり下がってはいけなかった- そらの珊 ...自由詩19*17-1-19
風花のことづて- そらの珊 ...自由詩21*17-1-18
猫雲- そらの珊 ...自由詩14*17-1-9
糸をつむぐ女- そらの珊 ...自由詩23*17-1-4
幸せな光景- そらの珊 ...自由詩19*16-12-14
今夜はペペロンチーノ- そらの珊 ...自由詩10*16-11-19
冬めく- そらの珊 ...俳句14*16-11-5
ほとり- そらの珊 ...自由詩10+*16-9-19

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