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穏やかな風と光が
丘のひだにあふれて
卒寿の猫背を包みこむとき
おひとりさまのスライドには
しみじみとよみがぇってくる
はるかに過ぎ去った
白い季節の ....
冷笑しないでください
卒寿(おいぼれ)ともなると
ゆめとのぞみは萌えにくいのです
青い年
とちがって・・・・
謳歌はうまく唄えないのです
赤い「根明」(ねあか)の齢(よわい)
と ....
庭木がかもしだす
日陰と日向が
その鮮明度を増し
遥かに漂っている
卯月の雲も
田の草月に移行するとき
いままで眠っていた
老残の ....
伊勢湾の一辺をになっている
(比較的 温和な風と光にめぐまれた)
知多半島は
丘の稜線から
いま 伊勢湾の貨物船を望遠してい ....
現役であったころは
不眠にこだわり
とらわれ続けていたのに
卒寿ともなってしまうと
むしろ 過ぎ散った
影法師を まさぐり
続けて ....
平均余命が 一桁となって
諦観の半旗が たれさがるなか
いまさら なにに
こだわり とらわれ
とまどっているのか
過ぎ散ったかげぼうしは
は ....
散策の道すがら
杖をつついて 卒寿が呟く
近頃になって
つつじが丘の街はずれは
新興住宅の建設ラッシュで
昔の歩道のつつじの群が
めっきり粗野になっちまったと
....
冬枯れした街の
家並みをすりぬけて
白糖の雪ぐもがうかぶ
紺碧となった 虚空のもと
ドライブに便乗する
その・・・ひととき
卒寿のおひとりさまは
....
原っぱが 広場となり
しばらくして
四号公園と 立ち札がたてられ
こどもの遊具が 設けられると
どこからともなく
子雀たちが見学に訪 ....
けさも 軍手をはめて
P・C のキーを叩いている
骨・皮・筋(すじ)衛門
卒寿になって
初めて知った
暮しのなかの「偶然」も
....
午前中まで鬱病だった空が
芥子色の北風に
引導をわたされたのか
裏庭のこずえを
誘拐して
近くで 戸惑う
人影をひきつれ
....
「師走」というと
通り一遍の味けは凡庸だが
「年積月」などと言い換えると
陰陽五行説を想起して
なんとなく 芳香が
五臓六腑から湧きあがってくる
かくして・・・・
老眼を ....
余命と寿命のあいだを
日々往復している
卒寿となったおひとりさま
にとって
それはありがたいことなのだ
往復切符の
砂時 ....
東海は 渥美半島の 砂山から
真昼の渚に 乱舞する
海鳥たちを ながめるとき
太平洋を覆いつくす
「悠久」のふた文字が
こころにしみて
....
東海は 知多半島の 里山に
野の鳥かげがうすれるなか
昼夜の区別もとぼしくなって
背の伸びきった「時」はただよい
間の伸びきった「空」が拡がっている
....
手入れが欠けた裏庭には
跋扈したぺんぺん草が 王者となって
むなしいかげを ふるわせている
神楽月というのに
優雅な舞楽は 聴き取れず
沈滞した深閑だけが 満ちみちて
丘のひだにも ....