娘たちは
もう眠ってしまった
何も書かれていない短冊がひとつ
テーブルに置かれている

なあ、父さんは
こってり疲れてしまっているから
願いごとなんて
ひとつも浮かばないんだ

静 ....
沈みゆく陽の揺らぎ
それは
遠く、ただ遠く
待つことの幸せ

青いさかなの首飾り
それは
諍いのない空の果て
明日を生きる
水のこと

夜光虫の静かな灯り
ちいさく
名前を呼 ....
明るい空から
さわさわと緑の雨が降るから
おまえの誕生日は
いつも濡れている

水色の
ローラーブレード
畳の上で
肘あてや膝あての
具合を確かめている
それは
おまえを守るため ....
かつん、とネジが落ちてきて
気づいたの
あの銀色の月は
機械仕掛けなんだって
 
黒い蝶が
りらりら羽ばたいて
夜の甘水を渡っていく
 
世界が
どんなに張りぼてだって
眼に映る ....
連続するシグナルが流れ込み
激しく流れ込み
とりとめのない水圧に
胸を押される

匂いのない夕暮れが満ち
眼球の裏側に満ち
屹立する剥製のように
赤光を反射させる

{引用=
僕 ....
言葉はひかりより
遅れてやってくるから
たぶんまだ
君は粒子で
かすかな時間差の中に
小さく膨らんだり
縮んだりしているんだろう

空は淡く
まだ少し痛いから
僕は水辺にいて
円 ....
このように銀河は白く
星が密集して見えるわけですが
隣り合う星どうしでも
何光年という隔たりがあって
異なる時間と空間から出発した光が
一斉に辿り着いた
奇跡的な現象なのです

例えば ....
ハワイは1年に3cmずつ
日本に近づいてるんだって
と君がいう
うん、いいね
とぼくたちは笑う

9才の君が
どんなに長生きしても
せいぜい3mか、そこら
それでも
いいね、とぼく ....
十二月の
さみしい水の底から
きみのささやきに
耳を澄ませる

ふるえる感情の
ひとつ ひとしずく
その波紋
その不自由

どうして人は
急ぐのだろうね
日時計の影が
伸び縮 ....
回転を少し止めた朝は
おだやかな
エメラルドの生地で

ひとつの心臓もない
白い砂床に
波のつぶやきを聴く

貝の肉のような
とりとめのない柔らかさに憧れ
ギリギリと角質の擦れ合う ....
空はどこまで
ってきく君の
求めている答えは
わかっていた
あのとき
君の肩は細くて

花びらを
青い水に散らして
一文字ずつ撹拌する
結実してしまうものが
何もないように

 ....
うすく流れる明け空に
寝返りをひとつ

隕石とか堕ちてこないだろうか
僕は僕の人生を
いいかげん
供養してあげたい

逃れようのない角度で
刺し込む朝は
強制ですか
それとも、任 ....
緩やかな助走から
蹴伸びする季節が
完成されたフォームで
越えてゆく
夏の高さ

背中に近いあたりの
肋骨を支えている

僅かな緑陰を選んで
少し歩いて
少しの水を飲む

* ....
あんドーナッツを
ためて、ためて、投げあげて
放物線の落下する地点まで
走って、セバスチャン
つぎつぎと走って
受け止めて
全部くちで
そういう無意味な訓練を
たくさんして

*
 ....
僕たちは行進する
雨と雨と雨の合間を
かなしみの残る青空に
バシュポン
圧縮した空気は開放され
白い弾丸は
砲の初速を逃れた彼方で
小さな羽を広げる

あの
遥か積乱雲と日輪草の
 ....
非常階段は
ぜんぶ空に途切れているから
僕の指先はどこへも辿り着けない

そうして
夕暮れは何度も流れて
僕の肩甲骨を
ないがしろにするのです

(お母さんに来てもらいますからね
 ....
鉢植えは
水をやり過ぎて
いつもだめにしてしまう
気持ちが強すぎるのだろう
あなたのようにはいかない

虹のような光沢を紡いだ糸車が
カラカラと終わりを告げても
流れる水のなかで
目 ....
たなごころに
すとんと収まるその笛は
尊い土の重さと
ほのかな内空の軽さを
同時に伝える

私は
澄んだ森の気配に
肺胞を湿らせ
惹きつけられるように
ほっこりとしたぬくもりに
 ....
ねぇ、知ってる?
あの空も
この言葉も
本当は何もかもパプリカなのよ
私の創り出した世界

(レプリカ、と言いたい?
な、なに言ってんのよっ
パプリカよ
決まってるぢゃないっ

 ....
喧騒のなか
細い雨のメロディ
梢にしがみついて
姿を変えてみる

みんな
どこへ向かうのだろう
遠い、稜線をこえて
あしたも、あさっても
きゅうに
手をつなぎたくなって
あなたの ....
水槽の底の
薄く撒かれた石床を
胸に抱えたまま
いつまでも
眠りにたどりつけない

硝子の鏡面に映る
瞳の奥、の奥
私は
銀色のマトリョーシカを
組み立てる

+

あなた ....
白熊が死んじゃう、と言って
つけっぱなしの電気を
消してまわる君は
将来、かがくしゃになりたい
という

撒き散らかされた
鳥の餌のシードを片づけていると
芽がでればいいのに、なんて
 ....
演劇部の先輩のふくらはぎに
さくり、と突きたつ
矢文になりたい

長閑な朝の通学路に
あらっ?と気づかれて
さらさらほどかれたい

演目は
「草原とピアノと少女と」
そんなガラス球 ....
くるぶしを浸した
海の底の
遠ざかる砂に
裏返る
また少し君のこと

舞いあがる
風のゆくえに
どんな不自由をみたの
何もない空に
探してる
君の糸口

いくつかの土くれは
 ....
朽ちた木屑のかさなりを
踏みふみ
つづら登る春の里山

行く先々を導くように
萌える山吹
ふとした足元に
大人しくうつむく
鈴蘭の白、きみどり
ひとつひとつの
光りの具合を確かめる ....
氾濫する
春の本流を立ち泳ぐ
辺りには甘い毒素が満ちていて
脳から先に侵されてゆく

あらゆる感情の結び目は解けて
それがいいことなのか
悪いことなのか
判断さえおぼつかないまま
い ....
堅い梢から
白い気泡がぷつぷつと生まれて
二月の空に立ちのぼる

それは
君の唇からもれる
小さな温度に似ていて
僕の尾ひれを
とくん、と春へかたむける

ふらりと現れて
はな先 ....
夕暮れの水位は
さざなみ
浅い胸に、さざなみ
空白で埋めたはずの
小さな画布が
素朴に満ちてゆく

海面に浮かぶ
危うい杭に
うずくまる鳥の
膨らませた羽から
零れる文字のやさし ....
私たちは
複雑で
ランダムな現象の絡まりのようにみえて
実は
いっぽんの管なのです

とめどなく押し寄せる水流を
茫然とひらいた口腔から飲みこみ
洗われるまま
わずかな幸せの摂取と
 ....
乾いた空を見あげて泣いていると
(おとうさん
(あんまりやさしい気持ちになると
(涙がでたくなるんだよ
という

疲れたときは
ふうせんかずらの種をあげる
それから
ビールを買ってあ ....
佐野権太(209)
タイトル カテゴリ Point 日付
七夕自由詩10*10/7/8 11:21
パピルス自由詩7*10/7/7 13:41
水色の車輪自由詩21*10/7/2 9:46
メイプルシード自由詩15*10/2/6 13:11
夕暮れ、ときどきペンギン自由詩11*10/1/20 14:20
鳥の石自由詩14*10/1/6 0:05
星の授業自由詩16*09/12/29 1:07
空を飛ぶ宿題[group]自由詩30*09/12/19 22:36
ピアニシモ自由詩28*09/12/12 0:54
貝夢想自由詩16*09/11/27 1:02
水色スケッチ自由詩14*09/9/28 12:40
のりピー、一緒に逃げよう自由詩10*09/8/21 22:37
夏ゼロ自由詩6*09/8/16 0:19
セバスチャンと一緒自由詩17*09/7/23 10:49
鳩砲自由詩27*09/7/2 9:50
万引き少年自由詩9*09/6/30 7:37
雨の匂いをこらえている自由詩10*09/6/26 8:55
土笛の記憶自由詩15*09/6/23 11:37
ぱぷりか/ぱぷりこ自由詩12*09/6/19 15:17
さよなら、鳩自由詩17*09/6/17 18:40
窓辺に眠るさかな自由詩19*09/6/16 10:53
六月の水球[group]自由詩40*09/6/1 12:11
先輩フェチ自由詩22*09/5/29 15:14
貝むらさき自由詩20*09/5/20 9:27
花霞自由詩19+*09/4/8 18:13
春乱自由詩25*09/3/20 15:14
置き文自由詩26*09/2/6 11:37
素描自由詩19+*09/1/29 13:59
いっぽんのくだ自由詩7*08/12/18 10:02
おとうさんの空自由詩17*08/12/11 15:14

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