思い出は遠のくのでもなく

色褪せるのでもなく

失われるのでもなく

ただ軽やかになっていくのだ

綿毛のようにフワフワと

この世界を風に乗って飛び回り

ふとした拍子に舞 ....
穏やかに広がる一日も
暮れてしまえば遠ざかる
音楽の鳴り止んだあと
空間のどこにもその音が
残っていないのと似ている

それでもその一日はそこにあったのだと
信じることを支えてくれる
 ....
夕餉のおかずの買い出しに
老犬を引っぱるように散歩へ出て
明日の予定に思いを馳せるともなく馳せながら
路傍に伸びる植木の影に目をやってふと
いま自分が神様の時間の中にいることに気付く

神 ....
美しい夕暮れに見とれることも
大きな声で歌うことも
誰かに恋をすることも
煎じつめれば逃避行
どこへ逃げているのか分からないが
何から逃げているのかはよく分かる
それはひたひたと静 ....
ふいにすべてが遠ざかって

ぼくはひとりぼっちになった

窓辺の陽射しはほこりっぽくて

生きていくのは嘘くさかった

路地を通り過ぎる足音

薄曇りの空を抜ける弱い風

明日 ....
心の声に耳を澄ますことは
青空に目を凝らすのに似ている
見えているけど何も見えない
聞こえているけど伝わらない

空の青に果てがないように
心の海には底がない
どんな光も届かない遥か深み ....
日当たりの悪いベランダで
洗濯物が乾いていく
気まぐれで買った麦チョコが
戸棚の奥で湿気っていく

あんなに好きだと思っていたのに
あんまり顔も思い出せない
あんなに好きだと思ってい ....
言葉にすると言葉にしただけ
そこに意味が生まれてしまう
あらゆる意味から解き放って
言葉を自由に羽ばたかせたいのに

ひとのあいだで暮らしていると
なにかにつけて「君はいったい
なに ....
それはそれとしてだね と独裁者は切り出した
今度の三連休は皆なにか予定を立てているのかな?
福井の実家へ墓参りですと文部大臣が答え
彼岸に行きそびれていたもんでと肩をすくめた
私は熱海に温 ....
ゆりかごに横たわる
緑児の口元に
朝霧のように蟠る
言の葉の胎児たち

邪気の無いむずかりは
苛立ちか歯痒さか
未生の語彙が萌え出ようと
口蓋をくすぐっているのか

まだ意味を ....
半導体になりたい
半導体になっていろいろな機械の内側で
あんなことやこんなことをしたい
多様な意味合いを持った各種の電気信号を
ああしたりこうしたり
アレしたりコレしたりして
ムフフでイヒ ....
ぼくはかぼちゃがすきだけど
あのこはそうでもないみたい

きみはやきゅうがすきらしい
ぼくはあんまりすきじゃない

ぼくにはすきなものがある
ぼくにはきらいなものもある

それは ....
あなたがぼくを愛してくれるので
ぼくはここに生きていられる
そしてまた同時に
いつ死んでも構わないと思えるのだ
心の底から

愛は蒼穹の奥に実り
愛は深海の闇に茂る
愛は春先の風に ....
この信仰を
漂わせたい
川面に浮かぶ
水草のように


この信仰を
揺らめかせたい
街道に立つ
陽炎のように


この信仰を
はためかせたい
洗いざらした
靴下のように
 ....
クーラーの唸りの向こうで
ミンミンゼミが雄叫びをあげている
挽いたコーヒーにお湯を注ぎながら
ふいに世界は今ここで生まれたような気がする

もしくは今ここで終わるのかもしれない
窓から ....
思い出すとかなしくなるからと
思い出さないようにしていたら
いつしかほんとうに
思い出さなくなっていた

本当に忘れたわけじゃない
あの日あのときの鋭利なうずき
もう世界が終わればいいと ....
かなしみは降り積もる
綿雪のように


歓びは萌え出づる
泡沫のように


さみしさは染み透る
五月雨のように


怒りはさんざめく
木漏れ日のように


苛立ちは ....
空の青さが気に障る
ポストの赤さが目障りだ
風が吹くのも厭味だし
花が咲くのも虫唾が走る

大好きな漫画の新刊も
大好きなバンドの新作も
もうどうでもいいような
今はそんな気分なのです ....
雨だれになりたい

樋を伝って膨らんで落ちて

敷石の上で仄かに爆ぜる

細い雨だれになりたい



せせらぎになりたい

闇とも光ともつかぬ暗がりを抜けて

この世界の遥 ....
網戸に身体を打ち付けて
羽虫が自由を欲しがっている
窓を開けてもいいけれど
他にも虫が入ってきそう

きっと君は悪くない
たぶん僕も悪くない
誰のせいでもないけれど
僕らは静かに不幸だ ....
川の底で
石くれが削れていく

棚の奥で
干菓子が湿気っていく

人がまた
一つずつ年老いていく

失われていく何かを
今日もただ見守りながら


床の上で
米粒が乾い ....
けちけちしたって仕方がねえや
どうせいつかは御陀仏なんだ
使えるものは使えるうちに
食いたいものは食えるうちに
一寸先から真っ暗闇さ
行燈なんざ役に立たない
生きてるうちに生きておけ
 ....
あわてずさわがず
ゆっくりいこう

流れ去る時間を
今 この一瞬の
素肌の上へ

丹念に
塗り伸ばしていくように



あせらずせかさず
ゆったりいこう

降り注ぐ光が
 ....
雨が降り始めた
はじめは静かな
そして次第に大げさな音をたてて
雨粒が校庭の砂地へ染み込んでいく
監督がいったん切り上げろと
ベンチ屋根の下で叫んで
みんなで部室棟の張り出した庇の下に駆け ....
このところの長雨で
情報がふたたび洪水を起こし
人の街を飲み込んだ
だれもが溺れまいとして藁を掴むので
藁売りたちはひどく忙しい
原料の藁が中国でも高騰している上に
アジア経済の勃興で人件 ....
いつから眠っていたのだろう
喉が渇いて目が覚めた
タイマーの切れた扇風機が
気難しそうに押し黙っている

枕にしていた右腕に
畳の跡と焼けつく痺れ
汗ばんだシャツの裾を振る
庭木の蔭か ....
ハロー・ウォーター・コカコーラ
嘶くような呼び声が
ハロー・ウォーター・コカコーラ
椰子の切り絵にこだまする

青空は今日も残酷に
枯れた砂地を見下ろしている
水を飲まねば生きていけない ....
それはとても欲しいものだった
いつもキラキラ輝いて見えた
見るだけでぼくは幸せになれた
それはとても欲しいものだった
なんども目を凝らしてまばたいて
なんども手を伸ばしては
届かず ....
庭のすみで箱を見つけた

その箱の中に庭をつくった

その庭のすみに箱を置いた

その箱の中に庭をつくった

その庭の中で

ぼくとあなたが暮らした

おだやかな日差しを浴びな ....
ぼくらはたったひとりなのだ
いくら目を凝らしてみたって
ぼくらはたったひとりなのだ
恥も外聞も捨ててしまおうよ
ぼくらはたったひとりなのだ
いくら耳を澄ませてみたって
ぼくらはたったひとり ....
青井(61)
タイトル カテゴリ Point 日付
思い出自由詩421/3/6 10:53
記憶自由詩120/3/15 7:20
神様の時間自由詩117/5/5 14:48
逃避行自由詩316/12/20 14:30
ひとり自由詩116/12/5 21:35
心の声自由詩216/7/31 11:43
麦チョコ自由詩316/3/16 23:18
オオバコ自由詩0+16/1/22 19:20
独裁者自由詩016/1/18 23:06
創世記自由詩416/1/13 21:10
半導体自由詩215/9/9 19:34
すききらい自由詩315/9/2 21:40
寵愛自由詩215/8/24 22:11
信仰と朝顔自由詩015/8/14 9:53
八月自由詩315/8/1 10:57
思い出自由詩015/7/22 23:28
影法師自由詩115/7/21 19:19
不機嫌自由詩115/7/20 13:10
憧れ自由詩715/6/27 17:36
不幸自由詩215/6/23 22:21
干菓子自由詩315/6/22 22:11
鯔背自由詩215/6/16 21:22
悠々自由詩015/6/14 23:23
自由詩215/6/11 19:21
藁を掴む自由詩015/6/9 19:55
真夏自由詩115/6/8 20:55
ハロー・ウォーター・コカコーラ自由詩015/2/2 15:12
wanted自由詩215/1/29 16:15
箱庭自由詩315/1/18 22:22
ぼくらは自由詩4+15/1/16 20:57

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