優しく、なりたい
暖かい部屋でうずくまると
人たちの裏側が透けて見える
思うほどには
複雑に出来ていないのかもしれない
優しくなりたい
おはようと言うように
季節を捲って ....
昨日が朝になりたがる日
どうにも眠れない嘘がある
まだ、一つひとつを上手く運べない君は
回りくどい道程でもって
明日の夕暮れになりたがる
前へ、前へと変容する君たちがいる
秋空がいつの間に ....
死体になることも出来ない
朝の、調子はどうだ、と聞かれても
貝殻になりきれない私では
考えているからと、通り過ぎるしかない
美しくありたい
ほんの、時々でいいからそう思って
張り詰めた ....
絶える昨夜が静かに終わって
それでも、紡ぐ言葉が見つからない
明日の羽音がまだ見えるのは
踏み込む足が力強い、から
ほら、世界はこんなふうに明るい
ドアが開くと、大勢の人が流れていく
....
ただいま
と、呼べる場所をいつもこの手の中に持っている
気付かないほどに当たり前の鼓動の中にいる
夜更けへ向けて風速は加速し続けている
明日を見渡したいから、と
君は潜望鏡を買ってき ....
砂糖が乾いていく
あるいは溶けていく
運ばれていく
最初からそこにはなかった
かもしれない
舞う風、の風上
私はただ口を開けて
私の中を乾かすことを止めようとしない
追い掛けること ....
今日も名前を落しました、と
誰かがその部屋へ駆け込んでくる
それではあなたを何と呼べばいいのか
振り向くと君の支えは薄いものでしかない
ついに君も名前を落して
誰か、の一人になってし ....
間違えることが、終わって
拍手がいつまでも続いている
始まりと終わりが気になるのは
それだけが手触りを残していくから
雨に濡れた窓が
鉄塔に光る赤い昨日を反射している
さよならを言えな ....
空に、鳥の滑空していく
きん、とした音が響いている
いつも何かが足りない
青いだけの視界を補うように
手のひらはいつも、上を向いている
いつも着地する景色には
逃げ出してしまう色が ....
想像して
君はよくそう言うけれど
実際のところ僕は、何も思い出せずにいる
海沿いの寂しい国道を夕暮れに倣って左に折れると
何もない町があるのか
君の住む町があるのか
もう、どこにも行けない ....
けれども
遠い場所へと離れていった
あの人はいつも笑っていたはずなので
それだけを支えとして立ち並ぶこの街は
寄り添うには頼りない爪先でしょうか
高い高い都会の空は見えますか
私を繰り ....
ついでだからそれも(どこか遠くへ)
捨てておいてよ
使い切れなかった、使い捨ての
積み残していく、観覧車
(あの景色はどう見ても、空回りしていた)
夏は、どこを切り取っても夏で
僕はい ....
薄暮れて
眠り続けた一日が
黄昏に、朝と夜とを迷う視界に
君の小さい、窓辺に向かう後ろ姿が
棚引いて
まだ平原には届かないから
打ち寄せる波がこちら側を削っていくのを
た ....
夢に、夢に向かう背景には
軽く弾んだ音楽が流れていくので
踊ります君が、君として充分になるまで
僕は待ちますが、待ち惚けるのは敗戦なので
緑色の空が綺麗だよと言うと
君は送ってあげるよ、と
....
夏祭りの音の屋根
迫り出した空のかけらは
まだ遠い、午後の私へと溶けていった
古い夢の神社の石段を
ひとつ飛ばしで駆け上がれば
頼りない心音のままで
私はきっと、そこにいる
夏の夕暮 ....
よく分からない、ということを
よく分からないだけ口にして
僕らはどのようにして、というようなことを
常に曖昧な部分ばかりを気にするために
ただ少し、西によって歩き続ける
ときどきに、冷ややか ....
それでもあなたは膨れていきますか
記憶を少し、壊してみたのは誰のこと
過ぎることも簡単にいかない夜ばかり
振り返ることも出来ないだろう、この身なら
薄い化粧の夢を見るので
慌てて顔を洗い ....
今日は、夏草に混じり
涼やかな声が運ばれていった
どこかずれた休日は
雨に掴まれて、離れられない
人とは違う夢を見ている
そう思いながらもう一度目を閉じると
いつか聞いた歌が繰り返され ....
吹き抜けのある町に生まれた
回り階段を何度か抜けると
大切なものが床に散らばっているのが見える
高い天井はどうやって作ったのだろう
昨日は知りたかったことが
今日には通り過ぎている
支 ....
外れたままの受話器で
それからの答えを待っていると
見知らぬ誰かと話が通じてしまう
こちらは、遥か国です
隣で寝ている父の横顔
最後の声はいつだったろう
僕から父へ真似てみせれば
こんな ....
空転しそうな少年は
風が吹けば背を向けるしかなかった
夕日からは目を背けずに
焼け付く色を一日でも、忘れずにいたかった
誰かを愛したことはあった
それを背負うだけの重さなんて
誰にもな ....
どれだけの言葉を飲み込んで
君は生まれていくのだろう
統制のとれた四角い部屋に
白い壁、のような服
悲観的な視線たちが
埋め尽くしてしまいがちな世の中に
「ほら、窓の外はこんなに明るいよ」 ....
物置の中では
今日も途方に暮れたものもの、が
自然な姿で融解しあっている
主人は今日も不在だった
あと何年、ここに居ればいいのだろう
ありがとうの行き先を
いつも間違えている気がして
....
沈んでみても、何も知らないままだった
それは六月のサイレン
降り止まない四月の桜
同じところを同じだけ繰り返して
歌声はそれでも高いところを目指している
好きな人を好きな ....
このようにして
夏を取り巻く呼吸は
やがて薄れていくのです
擦り剥いてしまった、膝のような
削られていく私たちを
夏空はどんなふうに
抱いてくれるでしょう
グラスの中の氷は
き ....
「輪郭はね、大きすぎない方がいいと思うんだ。
両手を、こう。ゆらりと、一杯に広げたくらいの」
朝の電車は
どこかに海の匂いが紛れている
だから皆、溺れた ....
「天井に穴が開いてね。いつまでも眺めていたら、
なんだか塞ぐのが、勿体無く思えてきたんだ。
ほら、そこから突き抜けていけそうだろう?」
一割ほどの ....
見知らぬ人から葉書が届いた
元気ですか、とだけ書かれているそれに
元気ですよ、と応えてみても
一人の部屋は結局一人だった
置いていかれた
この街も、いつの間にか色が薄くなってきている
....
乗り過ごしの君を乗せて都会の
寒いばかりのドアは行き過ぎる
ざらついた坂の向こうで、夏は
君の声を真似て、笑う
誰のものになるか、晴れ向日葵
種を植えたのはふたり、以上で
なりそこない ....
振り分ける少女の、
想
名前もない
痛む、芯も
未完成な少女の主題は
誰にも知られない、それだけの行く末
本を開けば文字に溺れた
さかなに、なりたかった
揺らぎ揺らすからだの線
....
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