夕日は傾く時間を知っている
その頃になれば
世界がゆっくりと閉じていくことも知っている
背中で、背中ともたれあう
隙間の部屋
四角いスイッチで昼と夜とを切り替えて
のろのろと、立ち上がる
....
夜の真ん中の
縁をなぞりながら
影だけの月の
少しだけ零れる明かりを
晴れることの出来ない日
ここでも
傘だけは、ある
夜に、越えられずに
息の詰まる深みを
ゆっくりと
息を入 ....
駅前で
ギターで歌い続ける少年の
声を誰も覚えていない
ギターの音色が日付を越える頃
繰り返している月のかたちを
誰も答えられない
すっかり冷えきった自動車の
エンジンをそっとかける
....
色付いた葉が落ちる音、が
聞こえるような
そんな
ある日
静けさは、遠く
連続している朝は
同じように連鎖していた
ありふれている
一杯のコーヒーを
少しだけ苦くした
新聞 ....
一時間に一本だけの電車の中で居眠りをしてみると
回想の中で自分の自分に逢えるので
もう一度と思ってみても
一時間に一本なものだから
すごく困ってしまう
ぼくらは、たまに
どうしよう ....
大通りが静かな日でした
西側に傾いた窓から空を見下ろすと
秋でした
寝転んだ姿勢のままで
耳を使って確かめてみても
国道は確かにそこにあって
とても
静かな日でした
赤とんぼが ....
この道、小道
ゆっくりと
滑り出す
よく晴れて
いない日を
休日に選んで
毎日の余韻で
痺れている右手を
左手でそっとさすりながら
寝転がっている、この場所
四角い ....
夕暮れの暖かい雨の後、で
軒下で忘れられている風鈴を
小石で狙い撃ちにする
ちん、ちりん
乾いた音で
ひとつ、暮れてみる
自転車のベルは
ここまでは響かない
綺麗に揃えた靴で出掛け ....
混ざり合った夏と秋
蝉の声は草の裏
公園に砂場
さらさらに乾いて
吹き飛ぶ
子供の目線
詰まっている
遊
風化もしない
流れもしない
とどまった
ままで
混ざり合っている今 ....
泣き虫だったあの子は今どうしているだろう
と
眠いだけの午後の中で
当てはまるように浮かんでくる
絡まりそうな思考を
かき分けるように居座る
昔、記憶
ひとつ
指切りで交換した約束 ....
遊星の昇る日
空の縁
半円を描いたら
落ちていく
時々振り返ってみたり、見上げてみたり
大通りの騒音がすっかり馴染んでしまったせいか
空の動きのほんの少しなら、気にならなくなってい ....
それを
望んでいると
思ったばかりの
ところに
球状の
破裂しそうな
言い訳が降りてくる
透明な空には透明な線がある
らしいけど
雲に紛れて今日も見えない
東経139度北緯35 ....
散歩の途中で
くしゃみをすると
塀の向こうから犬に見つめられて、困った
立ち止まって見つめ合ってみるけれど
悪いことをした
わけではなく
少しだけ難しいことを
難しく考えてしまうから ....
流れ込むように
止まれない足元は
回転する音を
通り過ぎた重みを含ませながら
響かせている
夏に
焼ける
アスファルトが靴底を溶かしている
積みあがる積木の街
冷めないままで
....
透明に
張り詰めた
ガラス窓から
朝日が零れているよ
覗き込むと
昨日が
音も立てずに沈んでいくところで
空間
四角く区切ったそれを
大勢の息で共有しながら
積み上げられている ....
逡巡
ほんの少しの間隔で
手をつなぐ
手をつなぐ
街の角での深呼吸
こんなに苦い空気でも
こころは深く平らになる
よく晴れた日
取り残された月を見つけて
一秒
一秒を
見 ....
僕のお気に入りのフレーズは
もう届かないとこにある
空
青くて、青い
静かな朝を
飛行機が筋を引いていく
ゆっくりと吸って
吐く
そんなリズムだ
忘れることも出来ないくらい数え続 ....
どうしようかと
暮れている一日
些細な段差に躓いてみたり
心の縁を爪弾いてみたり
火の上で
ゆれるやかんに
お日様が降りていく
じゅっと
音を立てて
沈んで落ちていく
....
点と線と千
繋がらない夜があって
道に迷っては
迷いっぱなしになる
街灯は
月明かりに似せようと
目には見えない点滅を繰り返すけど
足元を照らすには
まだ足りない
らしい
....
思ってみること
ここにいる僕等の存在を
君のその歩幅を
かたかた、と
時計の裏側で回る歯車の
噛み合うその一つ一つを
階段に登っている
繰り返している
繰り上げている
そ ....
滑り台の上で滑り出せずにいる
後ずさることも出来ずにいる
飛行機が滑り込んでくる
地面すれすれ
空気が摩擦して
夏が濃くなる
毎日を鏡に映してみても
逆さになる他は何も変わらない
....
垂直の空を
仰ぎ見る
ここは空の縁の終わらない場所
折り重なった雲と雲が
覆い被さってくる
雨
続きを
見たいと思っている
染み込んでいく雨粒と
あの雨の後の匂いの行方を
空へ ....
ふおーん
警笛を置き去りにして
カーブに消えていく電車
踏切では遮断機が開くことを忘れて
取り残された人々
遠くでもう一度
ふおーん
ここはゆるやかに傾斜している世の中なので
くす ....
蝉が時雨れている8月の
呼吸がぴたりと止まる時がある
子供達は公園でぶら下がっていて
突然の静寂にゆれている
初めてついた嘘はどこへやったかと
懐かしい引き出しをひっくり返すと
初めて ....
おーい
と呼ぶ声に
波線を見ています
空の上
海の下
その間の曖昧な辺りで
いつだったか春の衣装だった頃
それでは暑すぎると文句を言った頃
山沿いの海沿いのラジオも響かない場所 ....
街外れで
唸りだす自動販売機の理由を
僕は知らない
全てに理由があると仮定して
その唸りの意味を
誰も知らない
振り向いてしまう癖は
いつかの草笛のせいで
僅かな違いを聞き分けるこ ....
乗り込んだ8番線ホームは
おかえりと張り紙がしてあった
朝顔の色を真似た夕暮れ
僕は余白に
ただいまと付け足す
忘れ物がいつまでも見つからない
開け忘れたカーテンのそば
自分色で横た ....
冷凍庫から取り出した氷の
溶けていく音が響いている
ちりちり ちりちり
静かな部屋に染み渡っている
窓の中では雲の
輪郭と輪郭とが
混ざり合いながら変化している
終わらない終われない ....
いつだって繋ぎ目は曖昧だから
継ぎ接ぎは空にだってある
雲の
折り重なった影を
届かないその曲線をなぞったりする
ほんの些細なことが
いつまでも尖って痛いので
繰り返す垣根の下り ....
緑の海がたなびいて
少しのカーブで横切るレールを
3両編成の電車がすり抜けていく
乗り合わせた肩は語らないまま
ひとつひとつ 暮れていく
天気予報は雨
降水確率は不明
飾らない傘の行 ....
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