しわひとつないテーブルクロスに、鮮やかな花々。
ポーカーフェイスの給仕に椅子を勧められ、席に着く。
差し出されたメニューは白紙で、けれど彼は静かに問うのだ。
「ご注文はお決まりですか?」
....
定期考査に追われた学生のように、さぁ、身辺整理を始めようか。
いつでもどこへでも旅立つことができるように。
跡を濁さぬ鳥のように。
埋め尽くす雪のように。
澄み渡る空のように。 ....
来年のことを言ったから鬼が笑った。
勘が良すぎるのは考えもの。
唐突な別れは何の感慨も呼び起こさないらしい。
ひとを失うということのなんと簡単なことか。
「哀しい」のだと確信を持てない ....
残酷なまでに美しいこの時を
君よ わすれないで
雪も降ろうかという冷え込みに襲われた あの冬の日
君は生まれ 私は逝く
私が最期の吐息を零す頃 君は生まれて初めての光を感じた
君の表情が忙しく変わるたび 私の為の悲しみは薄れゆくだ ....
黄昏時の丘 曼珠沙華の群生
緋色の絨毯 唱和する彼岸への祈り
少女は手に堕ちることなく{ルビ喪=うしな}われた
陽炎の向こうに見えるのは
あどけない影の ゆめまぼろし
....
赤い夜明けの子守歌。
青い果実が交わす密談。
緑の森に蝶の舞う音。
黒の墓場に響く慟哭のオペラ。
白兎が沈む沼のため息。
黄金の地平を巡る聖歌。
君は歌いながら旅をする。 ....
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