お母さん、
私ピアノは嫌いなの。
だってピアノはうたわないもの。
そう少女は言い残して
私は捨てられました
部屋の隅に置き去りにされた私は
つい先ほどまでの幸せだった時間を
思い返し ....
今、
紙切れを擦っています。
心がまとまらない内に
鉛筆を適当に走らせて
しまっていたので
適当な言葉が
紙の上に並んでいます。
一心に擦ると
真ん中の方から
二つに
割れてし ....
また一つ冬を越せました。
抜け殻にも似た心の
切れ端を無理矢理に
つなぎ合わせて
私はわたしを保っていた、
夜。
誰にも救われなかった涙を
すくってくれたあなたが
....
風が吹けば
どこか知らない場所まで
簡単に飛ばされてしまう
あんなに高かった空さえも
簡単に触れられそう
でも、
空に天井はありませんでした。
と言おうとしたら
声は空気に ....
お昼時
おなか空いたなぁ、と
声に出してみたら
余計におなかが空いたので
仕方なく
空気を食べる
ばく。
となりの人
となりの人、名前は知らない
いつも夜に帰ってくる人
だからまだ会ったことない
だってとなりの人が帰ってくる時間
僕はもう布団の中だから
となり ....
存在
が、{ルビ危=あやう}いので
私は爪を{ルビ齧=かじ}る
以外
存在の端くれを
確かめようがない
ので、爪を齧り続ける
親指を終えた頃
心臓の音が聴こえ始め
次第、次第 ....
せかいの欠片が落ちていました
落とした人はまだ近くにいたので
「せかいの欠片を落としましたよ」
と声をかけると
「私のではない」
と言うので私が育てることにしました
指先くらいのせ ....
私はその日かごの中にいました
かごの中には私だけしか
ありませんでした
次の日も
私はかごの中にいました
次の日も、その次も
あまりにも
そのようなことが続くので
私は悲しくなりま ....
ひつじを踏んだ 声はなかった
ひつじは足下で ばたばたしていた
ような気がした
「元気かい」とためしに声をかけたが
ひつじはひどく疲れていたか
もしくは踏まれて不機嫌だったのか
答 ....
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