ゆらり
夜の風が吹いた
───秋の、少し燻んだ色の、淋しげなにおいの風だった
8月の盆過ぎ、夜半
クーラーを止めて、窓をあけていたんだ、窓を───
扇風機ひとつで
扇風機ひとつで
....
短い雨のあとの空気中で
雷になりきれなかった淋しい子供たちが
火花になってはじけて
それは綺麗な夏の花火のようだった
眠りは疲れた身体を癒して
でも悲しくも
無理やりにも 僕を明日へ連 ....
今日までのことなんて
全部忘れてしまおう
このところずっと染みついていた淋しさは
火にかけすぎたシチューのように焦げついて
無理に剥がそうとすると
苦い味になってしまう
きっと思い出が ....
昼頃 ぱらぱらと雨が降った
空は眩しいのに 突風でげんこつ大の水飛沫がいくつも飛んでくるような
へんな天気だった
あなたは どうにもならない天気に飽きていて
僕は それでもあなたを見ていた ....
おおきな花びら おおきなむらさきいろ
よろこんでくれる 気がした
花束に散りばめられた薫り高いべに 唇を彩る
あなたに似た いろ
おおきな花びら おおきなむらさきいろ
あなたの好きな花で ....
つめたい絆
朝の6時ちょっとまえくらいだ
世界がはじまる
童話や伝承を押しのけて
無数の蝙蝠が
チョコミントアイスに散らばった
チョコチップみたいに
蒼緑色の空のなかで宴会をしながら ....
ルービックキューブまわすまわす
ろくろっ首まわすまわす
電子レンヂまわしまわる
風呂を沸かしながら急死したボケ老人は
空焚きのせいで
駝鳥のミイラ顔になってしまった
ルービックキュ ....
今日はね
いいつけを守って
砂糖もクリームも入れてないよ
クリーム3個入れたりしてないよ
だから
カップのなかは深い色だ
円形の蛍光灯が映り込んで
ゆらぐオレンジの球体
そか
クリー ....
僕はどうしてこうして
生きることに一生懸命なのだろう?
漫然と生きているようで
死に物狂いの努力をしなければ
人間はそこに存在することなどできはしない。
死に物狂いで努力することだって惰 ....
片道切符だ
行き先が書いてない
好きなところを書いていいと言われるが
字が少しにじんだだけでも
ありとあらゆる名前の駅があるので
へんなところで下ろされてしまう
わざとらしく台風が日本列島 ....
ヒラキッパナシ。
あなたはときどきふとんにくるまっては
失ったら気持ちがいいものについてばかり妄想する
図星?
梅雨の雨は
日が沈む頃になって
もう堪忍袋の紐が切れたと云わんばかりに降りだすが
秋の雨は
朝目を覚ましたときから降っている
こんなわたしですみませんと
かなしそうに
申し訳なさそうに肩 ....
塩鮭を食べていると
中央線をめくっているような気分がするのです
軽く焦げて乾いた皮を箸でつまみ
スズ色をはがしていくその下にあばかれるニスのような脂身のツヤ
崩れる鮭の肉
自転車置場から全速 ....
あなたを好きと呼ぶことは
抱きしめるふりをしながら
冬越えに飛び立つはずのあなたに
そっと鎖をかけている
あなたはやさしいから
気がついていないふりをしながら
ほどけるはずのその鎖に
ぼ ....
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