枯草を老人が畑で燃やし続ける
白煙が空へと昇る
冬の空は黒い雲が覆い、煙を呑み込む
竹薮で餌を漁っていた雉の群れが飛立つ
夕暮れは寒さだけを引連れてくる
寂しさが私の ....
高層ビルから飛び立つ鳩の群れが夕陽に消えてゆく
風が弱まり、私はマフラーを丁寧にたたんだ
残酷な夜が細身の体に迫る
街は静かに息を潜めてゆく
淫らな誘惑が通りに溢れては街を彩る ....
木々の葉から
ゆっくりと、また、ゆっくりと
雨雫が地へ落下する
ヒグラシが鳴き続け
今宵も孤独な夜へ誘う
頬を伝う涙も枯れる
私の恋は
....
朝。
寒さで心がささくれる。
あなたの温もりがあれば、
明日が訪れる。
空、
どんよりとした鉛色に染まる。
二十歳の別れは辛い。
あなたを過去へと葬る。
....
湿気が体にまとわりつき、
思わず吐き気がする。
遠くで雷鳴が轟き、
激しい雨の予感をもたらす。
僕は那覇空港で、
突然、タクシーを拾った。
約束の時間までは約1時間、
焦る心で目的地 ....
気まぐれな午後、
島影が波間に揺れる。
数羽のカモメたちが、
遊覧船の上を飛び回る。
潮風が頬を撫でるたびに、
束縛からの解放感を味わう。
自分から望んだ束縛だったのに、
息が詰まり、独 ....
春が過ぎ、
初夏が訪れた
両親へ手紙を投函すると、
重い肩の荷がおりた
今は、約束を果たせない
私を連れ戻さないでと、
両親に懇願したのに、
再び、裏切られた気持ちだ
もう少し ....
冬空をかき消す、
光る街に男と女は集まる。
単調なクリスマス・ソングが、
公園通りに響き渡る。
今夜、
何十人もの、
サンタクロースを見た。
トナカ ....
あなたは孤独に対峙できない
弱い生き物だ
心を持った時から
死との格闘が始まった
孤独の谷底は
冷たい深海だ
一度、心を奪われると
死の虜になる
断崖で足は竦み
激しい眩暈が ....
台風が接近している、と
ラジオのニュースで聞いた。
簡単な荷物を抱え、
早朝の駅へと急いだ。
波や風をしたがえ、
陸地を呑み込む。
恐ろしいエネルギーが、
私の心を、
なぜか、踊ら ....
波に洗われた
砂を掌にすくいとり、
潮の香りにひたる。
懐かしい故郷を、
記憶からよびもどし、
私は時を旅する。
冬の太陽は、
まだ水平線 ....
烏の絶叫で、
けだるい眠りから覚めた
体にまとわりついた
汗と体液を、
乾いたタオルで丁寧に拭った
腕時計は6時を、
今日も機械的に告げた
寝息をたてるあなたに、
シーツをかけ直し ....
小川で沢蟹を捕まえた。
鋏が宙に踊る、
指を挟まれた瞬間、
懐かしい痛みが蘇る。
僕は大人になった。
自ら望んだのではない!
親たちが大人に育てた!
....
日曜の夜は、
若いカップルが、
消えてゆくたびに、
孤独を連れて来る。
鳴りやまぬ
救急車のサイレンが、
冬空に響きわたる。
キーボードに触れるたびに、
....
石垣の上を這う
カタツムリを眺めて、
陽だまりにまどろむ。
柿の枝にとまる
カラスが嘴を磨き、
獲物を狙い続ける。
私が立ち去れば、
カタ ....
パイプオルガンの音色が、
無機質な空間に響きわたる。
あなたは涙を拭いもせず、
恋の破局を悲しむ。
肩が震えるたびに、
古い木の椅子が揺れる。
僕の愛はあなたに届か ....
古い灯台が、
巨大な台風に、
朝から怯える。
仲良しのカモメは、
草陰に身を潜め、
じっと空腹を堪える。
雲は黒い塊となり、
人々を弄び、 ....
木立の中から、
油蝉が飛んでくると、
あなたは器用に体をかわした。
首筋を流れる汗が、
夏の太陽に輝く。
あなたの影が強さをまし、
僕の心を惹きつける。
....
手嶋純
どんよりとした空が
朝の気分を重くする
空を埋め尽くす
アキアカネが疎ましい
秋は秋らしく
木々を染める
彼岸花は咲き乱れ
怪しげに人 ....
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