空の上なのか

下なのか

正六面体のせかいの

中心点に浮かんでいる

始まっているのか

終わっているのか

翼に穿たれた風穴を埋めるには

唾液だけでは足りなかった
 ....
あのつぎはぎ人形は

ずっと引き摺られながら

猫の爪痕 泥 恥ずかしい中身がこぼれる

磨り減ってゆくのか この空の下で ぼろぼろに

ほつれる右足

十字交差の中心に置き去りに ....
かつて二人は湖を持っていた

水は濃い翠で穏やかに波を立て

畔には湖を取り囲むように

世界から隔絶されるための勇気が植えられていた

その白さが危ういほど 純潔を保った花が咲き誇り ....
その透き通った影

彼女は微笑みながら泣いている

巨大な満月の中で

バルコニーの柵に腰をおろして

赤ん坊に乳房をあずけて

傍らに香を焚き

路地裏の暗がりに浸された長い ....
真っ暗闇の中で

なんとも暖かくて

からだの細胞がぜんぶ溶けていく

火鍋に浮かんだチーズのように

とろとろしている僕は

こんなに幸せな気持ちなのに

声をあげて泣いてい ....
白いツツジが咲いていたのです

心が浮くような甘い花です

ゆたりと喉を伝う蜜の香り

小さな手をべたべたにして

そのままスカートにしがみつこうとするから

よく貴女を困らせまし ....
どんなに小さな波紋でも

今ひとときを願う夜

果て散る枯葉に焦がれている

ゆらゆら月の真ん中に

小石をひとつ投げてみた
廃水路の脇で露店を開いた少年

流れてくる生首を拾い上げては

木槌で叩いてぺたんこにする

それをシャツに貼り付けて売ると

結構な稼ぎになるのだ



だけどアイツは羊を追 ....
くたびれた下校時間

竹林を抜ける石造りの階段

いつまでも濃い陰と木漏れ日が

白い制服を斑模様に染めていて

吹き降りてくる風がさくりと

汗で湿った襟首を引っかく

みん ....
ラジオノイズ

三秒先の暗闇から

明日の天気を届ければ

雲を脱ぎ捨ててしまう

その少女、青いシャドウ、巨大な蛾のような

指先に灯る重力が

心をそっと撫でてゆく

 ....
窓の外には

石となった旧人類を囲んで遊ぶ子供達が

誰一人として眠りを知らずに

すべての草花は咲いたままで 果てなく咲いたままで

毎日が祝福される たったひとつの俺の世界で

 ....
遠い明日と宇宙との境界面に浮かぶ

あの雲の中へ

右耳が千切れて 泥まみれになった

ウサギのぬいぐるみを引き摺って

彼女は夏の夜空に破壊されながら走る

腰丈にまで伸びた夏草 ....
ずっと

深い底の ほんの少し上

ふたり歩いていく ひしめく無音の群に押されながら

姿を失ったわたしと

透き通るからだに 誰かの貝殻を包み込んだ ちいさな海の仔 と

ふたり ....
工場街の外れにある袋小路

ボロボロになった雑誌を小脇に置いて

今は誰にも咎められない

踊る石筆

アスファルトは真綿のように

こぼれ落ちる問いを吸い込んでいった

ドラ ....
橋を渡る行列が

途切れることなく続いていて

とても不思議なのです

わたしもその行列のどこかに

紛れているのです

右隣には暗い顔をした紳士が歩いています

左隣には固ま ....
迅く走る影は

あれは魚だと少年は信じている

軒下に吊されるまでに

鱗なんて全部

魔女の爪の中で砂金に換わるのに

あの子は雲を泳ごうとしたんだって



少年がまわ ....
機械のひと

超高層ビルの屋上で

タンポポの綿毛を吹いている

いのち

夕焼けに熔かされてゆく

この星の肌を流れてゆく

抱き寄せたものの輪郭も不確かな

暗い夜に聞 ....
あの子が火の粒となって

どれだけの時代が過ぎただろう

三軒長屋の裏庭で

たわむれに散った線香花火の

ちいさな火照りから生まれて

むくんだ素足で まっくろな顔で

ふら ....
トーストの焼ける匂い

床を転がるジャム瓶のふた

バーゲンセールの飛行船

戦場からの生中継

すべての朝に融けてゆく

コーヒー片手に棚の上

無限がそこに座ってる

 ....
ひとつの瞬きの中の
帷の綻びから深遠を見つめる少年の
そのはるかな頭上を


商隊が騾馬に荷車を牽かせて
かぽかぽと銀河のほとりを迂回してゆく
どこか遠くの ずっと若くて活気のある星団へ ....
校庭の片隅できれいな石ころをみつけた
学んだばかりの醜さで奪いあって
あのとき僕らが細い腕を鎖にして囲っていたのは
この惑星に墜ちたひとつの原性ではなかったの?


みんなで笛を吹いていた ....
バター色が並んでた

垂れ下がったぼんぼりの

次また十歩 遠ざかる

逃がさぬように目で追った

こおろぎの鳴く林道に

仄かに燈るわたあめを

父の背に揺られ啄ばんだ

 ....
その入り口にある 水溜りに浮かぶ弓張りの月が

太く老いた竹の節を 浅葱色にぬらしていて

ここから先に入ってはいけないと 知っていたけれど

だけど小さな燐の火が

竹の闇間を泳いで ....
陽射しに青く染まる

耀く朝の枝で首をすくめる氷点

つめたいしずくが

透き通った時刻の表面を伝う

ちいさな吐息は宙色の結晶となり

遠ざかる背中に音もなく降り積もった

 ....
太陽の皮をむこうとして

両手がどろどろになった

汁が飛び散って 星と命 すべて熔け落ちた

甘酸っぱい香り 広がっていく

種は どこに蒔けばいいのだろう

見渡してみたけど
 ....
遮らないで きっと今夜は

一番しあわせな夜

枕の下に隠しておいた物語を ゆっくり数えはじめる



硝子に爪を立てる夜露

姿見の中に立つ架空

天窓に踊る フクロウの毛繕 ....
夕暮れを待たずに

森から逃げ出した木陰たちは

灼けた道路を飛び跳ねながら渡る

防波堤をみんなですべり降りて

はじめて歩く砂浜に騒ぎながら

穏やかに寄せる波に驚いたり

 ....
くるくる踊る たんぽぽを踏まないように 最後の季節の

幼子の髪の

ように甘い香りの

ぴんと露を弾く若葉に覆われた丘で

怪人は身体をあたためる

とてもおいしい 熟れた潮風  ....
板金工場の常夜灯が鼻先を照らして

土手を越えてくる 河のすえた匂い 廃水とフナの

遮断機が下りてきて カンカンうるさくて

鉄橋を渡ってくる貨物列車 積荷の豚と目が合う

電話ボッ ....
それはなにもない

深い溝の底に ひとり

夜の国の兵士が闇色の

滾々と注がれてゆく若さの中で

ぽつんと座っていました

小さく切り取られた夜空を見上げると

この夜の三日 ....
相馬四弦(51)
タイトル カテゴリ Point 日付
隻翼は虚空に踊るのみ自由詩1*13/5/3 16:15
リー・レイ自由詩013/5/3 16:12
秘鑰自由詩1*11/4/16 7:59
夜影自由詩2*11/4/15 13:36
おねしょ自由詩0*10/12/14 7:41
華と蜜自由詩010/12/14 7:39
水月自由詩2*10/9/28 18:46
羊飼いになれなかった少年自由詩1*10/9/15 16:48
二学期の憂鬱自由詩1*10/9/12 17:52
熱圏自由詩3*10/8/31 14:50
新世界自由詩5*10/8/12 22:04
夜光雲自由詩2*10/8/9 16:50
マリンスノウ自由詩3*10/8/2 12:39
石筆自由詩2*10/8/2 12:38
始まりと終わりに架かる橋自由詩1*10/3/4 12:24
魔女と少年自由詩2*10/3/4 12:23
日没に瞬きをしないアンドロイド自由詩2*09/9/8 1:30
火の粒自由詩1*09/6/12 12:02
天球儀自由詩1*09/6/1 19:29
星宙間をゆくキャラバンの宴自由詩2*09/2/3 13:36
千年石自由詩2*08/10/5 23:51
宵宮自由詩2*08/8/25 7:29
七夕自由詩1*08/7/6 18:54
樹氷林自由詩1*07/12/13 15:20
シトラス自由詩2*07/11/5 19:21
鍵穴から差し込む秘密自由詩3*07/7/8 20:10
木陰たちの夕宴自由詩2*07/6/5 17:12
怪人は最果ての岬に自由詩1*07/5/1 19:07
ラストコール自由詩2*07/2/11 19:00
三日月の詩自由詩2*07/1/12 21:09

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