よるはわたしをまたず迫ってくる
気がつくとあたりはくらく
わたしは電気をつけずにふとんにくるまる
ひるとよるの境目が
きいきいと鳴くおとでめをあけると
よるが目の前に立っている
わたし ....
ころんで傷ついた膝に
消毒液をふきかける
わたしの鉄でできたからだは
それだけで うごかなくなる
すき きらい を
判別できない指先の半月
ことば おと を
区別できない壊れた右耳
....
ある朝
右のみみがきこえなくなりました
ある朝
左手のこゆびがうごかなくなりました
ある朝
右のあしくびがまがらなくなりました
ある朝
左のめがみえなくなりました
わた ....
それは しずかな午後
それは 名前のないもの
それは 木陰で見つけた小さな頭蓋骨
それは かちかち音のならない時計
それは わたくしのないもの
それは 壊れたもの
それは 懐かしいもの ....
メルルーサというさかながいるらしい
昨日食卓に並んだ
私はそのさかなをしらなかったので
想像してみることにした
全長三メートル
深海にすみ ぎょろめ
口はとがり
歯がある
縦に ....
しんでしまうとか
めざめたくないとか
あいたくないとか
たべたくないとか
ゆめをみたくないとか
はたらきたいとか
樹になりたいのだとか
あの灯の中に行きたいのだとか
右手に花を ....
九段下
秋葉原
木場
清澄白川
…読めない
湯島
根津
上野広小路
ひとりきりでのったちかてつは
わたしをねむりにさそったが
いぜんのような安心感はまったくなかった
....
しずかだとおもうほど
わたしはここにいたいわけではない
となりにすわるおとこと
たわいない会話をかわしながら
わたしはよいを隠している
すきだとかあいしているとか
ねたいとか
そんな ....
ひとりきりでいなくなろうと思った
特に悲しみなどないのに橋の上から
飛ぼうかと思っていた
わたしはみかんがだいすきだったので
最後に一つと思ってくちにふくんだけれど
あまりにおいしくなかった ....
おやすみなさいとゆめをみない
おはようとめがさめない
こんにちはとてをふれない
さよならとふりむけない
しらないうちにわたしは
がらがらごえのばばになり
ひとりきりでさくらのしたに
ねむ ....
土に刺された
赤い下敷きのかけら
ゲルダが溶かした鏡の
破片のような柔らかな氷が
一度生きたはずのカイを殺してゆく
土の中に何を埋めたのだろう
蝉の屍骸か
(美しい薄羽、それから幾本 ....
切傷から流れ出でる血脈の
つんと甘い花の香を追い
絡みつく蔓の下に
思い出にひそむ君を知る
部屋の隅にひざを抱え
秒針の刻む音を聞く
耳をふさぎ目を閉じ
丸まり確かめる止まらない ....
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