1、
肥料袋が
日を浴びている休耕地
目の詰まった麻布を
砂地と見ちがえた蝶が
飛びあぐねたまま雲は過ぎ
菜の花の花粉を
集めて回る音
ひと気のない路地裏には
魚の血を洗う匂 ....
グザヴィエドランの映画みたく
君に贈ったプレゼントと
君からもらったプレゼントが
最後には
ぜんぶ空から降ってくる
ひとりきりの
水曜の
....
心臓が
風船のようにぱんと弾けて
水の線路が胸からまっすぐ
空へとしずかに延びていった
雲梯のようにそれを伝いながら
たぶん ずっと望んでいたように
わたしはさるとして閉経する
....
{引用=
くさきりはら橋、火に包まれる。燃え上がる{ルビ橅=ぶな}、椎、樫の森、火事のさなかにも岩魚は泳ぎ、水の中でなお炎上する。腹を見せれば狐に食われ、背中には芥子の{ルビ膏=くすり}が塗られ ....
工場の
金属板を打つ音が空に響き
僕はシートに深く座って
窓の外を見ている
電車は出発時刻を静かに待ち
構内のスピーカーの
沈黙が雨の音に聞こえる
涙は
いつも遠くから
そして人 ....
1、
夜
雨が降って
コンビニに入った
志田は煙草を買った
僕は電池を買った
そのままずっと
コンビニの屋根の下にいた ....
潮風を浴びている
白い丘
黒い岩肌、
なめらかな、
すべるように飛ぶ鳥の
くすんだ青の骨
、風に中指をのばす
調律師はもうなにも
弾かなくても、それが見えた
やさしい音楽 ....
この部屋で
あなたの魂の息に触れる
この部屋で
魂の息に触れられる距離で
この部屋の中で
あなたとあなたの横たわるあなたのあなたの体で
触れられる
この距 ....
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