あなたの笑顔に
キュッとなる
それは痛みを抑えた笑みだから
悲しみがまるで
今日の雨のように
あなたに降り注ぐ
私はあなたに傘を差し伸べるけど
あなたはその笑顔のままで首を振るね
だから私 ....
一番きつい、つわりの時に
電車で席を替わってもらえないのに
安定期の、一番動かなくてはならない
そんな大きなお腹の時に
みな私に席を勧めるのだ
車の後ろに付けてる
ステッカーみたい ....
ねえ 彼は幸せになったかしら
心臓のまん真ん中に
極細の針をほーんのいちミクロンほど衝き立てた
誰も気付かない程度の
霜がおりて真っ白の
日のまだ昇らない寒い朝
小指がかす ....
誰にさらせるだろう
私の全てを
私の全てとは何だろう
本当の顔とはどれだろう
幸せになるために
努めて笑顔にしてきたけれど
そうすることであったかい気持ちに
なれた気がしたけど
....
部屋の電気は全部消して
ネット界へのイリグチだけは開け放しで
風の入らない
無理矢理ウォークインクローゼットで
押入れを潰した
パソコンは埃まみれ
誇りまみれ
蛍光灯 ....
今日のネコ子さんはタンスの上
お気に入りの布団はぐしゃぐしゃにされ
かなり機嫌が悪い
今日は祭りで親戚の子達が来ているのだ
人嫌いではないが子供はなんせ
せわしなく騒がしい
....
屋根の上にネコ子さんがいる
今日みたいな日も
ネコ子さんはあくびをしている
僕が顔を出すと
「台風の日に屋根になんか来ちゃだめだろ、
ニュース見なかったのかい。」
「屋根の修理 ....
夏休みも終わり
プールの授業ももうすぐ終わり
空はどんどん高くなり
木々は少しずつ朱に染まりつつある
息子が一学期の終業式に持帰ったあさがおは
クラスで一番早く芽が出たのに
今 ....
だれる
うなだれる
母は自分でもうペットボトルの蓋も開けられないのに
私の掃除の仕方に文句を言う
若い時に肺結核で肺の一部を切除したから
母は水に入れない
息苦しくて
子 ....
「なかみはなにでできているの?」
幼い子が私に聞く
着ぐるみに入っている私は
その問いに答える事は出来ない
おしゃべり厳禁とアルバイト規約にあったから
「あなたのなかみはなにでで ....
あなたの涙が花弁に落ち、花は微かに揺れました
私の凍った心にも
その光景は焼け付いて
今はただ時折切なく痛むのです
月灯りの下
あなたと探した
宝石は今もなお
花弁を揺らし続けている
それは微かに微 ....
河原であの娘と手持ち花火
今日は風が強いので何本もマッチを無駄にした
その度にキミはくすくすと笑う
去年の花火だからしけっているのだと
僕は頭を掻く
キミは川面に浮かぶ月の反射を ....
もう会えないのでこんなところから失礼します
産休で来た代理教師を尊敬とか出来ないです
先生が若いからと言う理由で
主任先生の命令で
クラスで一番重い男の子を
背負って走る競技、負けて ....
さようならはいつも自分に向けて言っている
別れてもしばらくその人は私の心の中に住む
最初はどーんと真ん中にコタツでみかんを食べながら
サーフィンの雑誌なんか見てたりする
みかんの汁が目に入 ....
私のグラスに小さなチェリーが
ピンクの炭酸に揺れて
開店すぐからハイで
ワインボトルを開けてからの
この様です
閉店後のデパートの
シャッターの前で歌う2人組みに
盛大な拍手とシ ....
長い沈黙も
いいかげんなあの噂も
叶う事の無い願いも
あなたが居なければ
出逢う事も気にとめる事も無かった
つかれる筈の無かった嘘も
守られる筈の約束も
それはそこに存在するだけ ....
誰でもない私があなたに火をつけて
溶かそうとしているの
融けるほどに愉快に歪んでいく
醜いあなたを
私は少し嘲って口の端を上げる
私らしくなく白い生地に
赤い薔薇のドレスを
今日 ....
なんだろうな
理由も無く泣けてくる
それはたまたま欲しい品物が
売り切れてて入庫予定がなかったり
約束していた友達が法事で来れなくなったり
文字変換が上手く行かなくて
とてつもなく変な ....
お友達が冷凍みかんをくれました
春の遠足でした
給食のいつもの冷凍みかんは
最後のデザートなので
いつも融けてぐにゃぐにゃで
それはそれはおいしくないので
いらない
と言ったら
....
小学校の帰り
明日休みだからファイルを3冊も持ち帰るので
ランドセルがすごく重い
体操服も給食着も手提げに詰まっている
ほんの数十分の家までの道程は
まるで荒野の真ん中で見る地平線だ
....
つまらないとキミは言う
毎朝起きて顔を洗っても
どうせ夜には汚れて帰り
風呂に入って洗うのだ
洗濯機を見ながら
しばし溜息
どうせいくら洗濯しても
洗濯の終わる日は来ない
....
あ〜、花火はまだなん
さっきちょっとやってたで
今ほんなら休憩かいな
暑いわぁ
うちわ配ってたで
うちわやったら熱風くるだけやん
浴衣きついわ、おかん崩れへんようにておもいっきり帯しめよるから
あ ....
遠くへ行きたいんだ
少しぐらい暑くても
それはそれでいいんだ
誰も知らない未開の土地で
そこがジャングルの奥地で
ワニなんかが口をあけて待っていても
そんなの構いやしないんだ
そ ....
エレベータで少年と会った
少年は午後から遊ぶ友達を
朝から探して回っているそうだが
夏休みだからみんなどっかに出かけてて
なかなか収穫が無いようだ
少年宅は夏のおでかけの予定が無いら ....
蝉がワンワン言っている
普通蝉はミンミンだろうと怒鳴り散らす
そうすると一瞬水を打ったように静まるが
また誰からとも無く鳴きはじめる
そうして蝉は反撃を始める
ワンワンわんわんワンワ ....
この手誰の手?
ふわふわ手。
居眠りしている
子猫の手
ちがうよ
ちがう
それは前足
薄目をあけて
子猫が抗議
ニャーン
おじいちゃんの葬式の日は
雨の降らないカミナリの日でした
おじいちゃんは畑仕事の帰りに
自転車と一緒に倒れていました
おじいちゃんの畑には
夏は西瓜がなりました
おじいちゃんの西瓜 ....
今朝あさがおが咲きました
紫の花でした
昼前になると閉じてしまい
明日は別のが咲くのですね
今日私の目を楽しませてくれたあさがおは
もう咲かない
禁煙席も喫煙席もごちゃ混ぜで
店は煙でもうもうと
あたしはビールを一気飲み
送風しかない空調のせいで
みんな汗だく
涼しい顔であたしを手招き兄さんの
指には彼女と揃いの髑髏のリ ....
風鈴
縁側に転がる西瓜
金魚鉢に氷
染の団扇に
夕涼みの風に揺れる簾
懐かしいキミの裸足
髪を結い上げる細い指
藍の浴衣に紅い帯
藤の枕でうたた寝の
遠く聞こえる祭太鼓に ....
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