土に擬態してゆく空に、幾つもの六花が咲いてゆく。傍らを、頬や目尻を動かすことなく移動してゆく直方体。中には蟻が蠢いている。そう、伝え聞いたことがある。かつて蟻だった彼は酒を飲む度、種になりたい、あの六 ....
帰っていった
皆箱に帰っていった
玩具の温水プールの中で指をしゃぶっているのだろう
だから知った、
ブランコの軋む音が滴下していることを。
そしてそれを知らずにただブランコに腰掛けていたこと ....
ひっそりと音を立てず
忍者のように
背後を歩いてゆく
ぼくはそれを見ることが出来ないし、気付くこともない
知ってはいるのだけれど
砂を掬い、放り投げる、
風が分散させる、
見えなくな ....
車輪の一つ取れた車が
鳶のように夜の道路を柔らかに滑っている
その滑空は
ときに私を恐ろしくさせる
明けることのない夜の中
草を撫でる風のように
その車は
欠落していることを感じさせずに ....
寝ぼけてたかな
外国語で書かれた手紙を
さっき受け取った気がしたんだけど
どこかへいってしまった
夜みたいな手紙だった、ぼくのまだ知らない夜みたいな
おかあさんが
くれたんじゃなかった ....
ホームの向こうに
鮮やかな花が咲いている
緑のなかに
ひとつだけ輝いて見える赤い花
風と戯れ揺れる姿は
まるで手招きしているようだ
しかし
ここは隔てられている
それでもあなたは誘 ....
地面が赤く輝く
次々と生まれるルビー
祝砲と産声が織り成す交響曲は
誰の目にも美しいのだ
皆が同じ方向を向き
歓声があがれば
そこに美しさはある
逆を向いてはいけないし
向こうだな ....
ゆれると
たおれそうになる
吊り革を握っているのに
空を見ようとしても
天井にぶつかって
視線は戻ってくる
乾いた目の表面から内部をみると
中身のぬけた卵の殻が
遺骨のような卵の殻 ....
下を向いた少女の
影のような髪の毛が
風にたなびく
後ろに流れていった影たちは
空の淵、聳える山の向こうへと行く
山の向こうには
海がある
誰も知ることの出来ない、触れてはいけない黒 ....
欠け落ちた
びー玉の破片
転々として
とおくとおくへ行ってしまった
昔は
赤く発光していた
生と死を近付けることで、より明るく熱く発光していた
放っておくと
欠けた部分は自然再 ....
南西の天から届いた柔らかな陽光が
世界に張られた糸を弛ませる
糸に絡まっていたわたしは
自力で立つことを忘れていたので
膝から崩れ落ちた
しかし
大地も
陽光に解かれていたので
わ ....
だらしなく広がる巻層雲に横たわる私だったが、何も香ってこないので、イヤホンを外し接触を始めることにした。
ちゅんちゅん。
透いた空中を流れる声。
明らかに小鳥の発するものだった。
私は ....
私には
鉄が足りないようだ
あらゆる物には
磁石が内臓されているのだが
微量の鉄を
引き付けるほどの磁力は稀なのだ
動脈血のような西の空を見ると
私は逆方向に飛ばされ
光沢のある少 ....
月が濃い黄色でいるので
思わず私は
月を増やしました
周りで無数の羽音が
存在を表しますが
それはあくまで
音でしかない
とはわかっているのに
刺されるのではないか、と
震えます ....
いつもぽかりと空いている南の空の穴が
今日は埋まっている
穴は穴だと自ら信じなければ
穴でいられないのだと気付き
隠れたのでしょう
あなたは白球
土や草、空気の抵抗がなければ
死ぬま ....
鳴いた、犬が。そして失った。
私と犬は同じ空間にはいないので
すぐに失う
知ってしまったその存在
と、その消失
私は穴を埋めようと
懸命に窓の外へと手を伸ばす
普段歩いている道を
同じ ....
舞った白
紋白蝶
ではなく
ただのゴミ袋でした
私は
知らぬ間に春の中
鏡に映った私は
月でした
四方八方、隅の隅まで分散した光が私を照らし
光と影、、、をつくります
他人の眼には影の部分は映らないので
見える部分から私を構成します
無理矢理に、縫い合 ....
私は常に電車に乗っているので
たとえ小さな太陽が
幾つもの頂点で輝きを放っていても
そこに近づいて
恩恵を受けることは出来ないのです
現在は常に録画されますが
私は知らぬ間に早送りをしてし ....
過ぎ去った私は波となって
ジーンズを染める
そのジーンズの膝の辺り、裂けて、
そこには
空白が存在する
針と糸などでは決して埋まることの無い空白
大勢の波達は
誰かによって遠 ....
僕の体のどこかには
ソーラーパネルがついている
太陽光が動力源となり
仕事をしたり
勉強をしたりする
曇りの日は
調子が悪い
体はうまく動かない
雨の日、しかも月曜日だと
もうだめだ ....
舟、
から落ちた
青年の眼は
右往左往し
私に助けを求めた
私は
まるで彼だった私を探し
見つける
見つけたのだが
すでに、息をしていなかった
死んでいたのだ
死んだ体で ....
音に敏感になる
静かな昼下がり
小鳥の声が波打つ
口笛のような
彼女に相応しい音を出している
風が吹く、、
犬の声が轟く
彼も彼で
相応しい音を出しているのだ
....
遠くの空に
一つ ふんわりと雲が浮かんでいる
家の前で
ボールと遊ぶ少年が
一瞬、その雲に目を遣ったが
すぐに
足下に視線を戻した
もう
彼はあの雲に向かって
手を伸ばさない ....
目線を逸らし
背を向けようとも
輪っかのような未来が
戦場を囲う
地団駄を踏み
そこに留まっていると
知らず知らずのうちに
輪っかは徐々に小さくなって
酸素を奪っていく
....
仕事を終えた青年が
自転車に乗り家路を急ぐ
冷たい冬の空気の中を
逃げるように疾走する
家に着くと
既に明日が待っていて
滑り落ちるように
風呂と食事をこなしていく
そうして彼 ....
僕の
大好きな人が
川の向こうの町に引っ越した
喪服の列が東から西へと
空を覆うと
僕は 川を渡れる
夜は死ぬことを許すのだ
田舎の冬の晴れた日
窓の向こうから
胎児の声が
導管を流れる水の音が
聞こえてくる
優しい陽に植物は色付く
役所勤めの男があくび、をしている
ひどく美しい
ひどく静かだ
緊張 ....
あまり美味しくない過去をまぁるくくるめて
ゴミ箱に向かって放り投げる
無回転で空中を行くそれは
不思議な軌跡を描き
僕の現実を侵犯し
散々侵犯した末
入らない
おそらく
....
卵黄色の大きな手が
鬼の手か
母の手か
心を掴み
上下左右に細かく動かすと
それがスイッチだったのか
ちっぽけな溜息が零れる
足下を見ると
植物の亡骸が一枚
それ ....
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