胸糞悪い思いと同時に、反論の余地の無い事実と言う二つの思いが、べっとりと身体の真ん中にくっついて離れない。熱めのシャワーで体中を洗い流し、浴室を出る。栓を抜いた訳でも無いのに、浴槽の中から、ゴポゴポ ....
「出てくんなよ」
「お前が望んだんだろうが」
「うるせぇよ」
「子供みたいな言い方するなよ」
「うるせぇってんだろ」
「まぁいい。それで、どうするんだよ?」
「何が?」
「 ....
愛について
愛は芽生えるものです
脳内に芽生える肉の芽です 肉芽腫で、
腫瘍なのです
だから愛は気づかぬうちに脳の中に
根付きます
密かにあなたの一部と化します
愛という毒の芽は、あ ....
むかしむかしと言っても、きのうのきのうくらいカマキリ一家が仲よく草むらの中でくらしていました。今日も父さんカマキリがかりにでかけていきます。「いってらっしゃい。」と母さんカマキリ「いってらっちゃーい ....
よるがおわるまえに、きみといちどはなそう。
*
ここは、おいてけぼりのいばしょであって、
しかしながら、いつかはみんなでてゆくのだ。
ふしぎなことにね、なきがおがと ....
―――「私が最も恐れているのは、他人の”正義”です」
オンドレイ・ミミー・アナは縋るとも射抜くともつかぬ目でブリキ製の偶像に向かい、
もったいぶった仕草で手を合わせ、告白とも暴露ともつかぬ調子で漏 ....
風呂場から、浴槽にお湯が溜まっていく、柔らかく鈍重な音がする。俺はシャツを靴下を脱ぎ捨て、ズボンのベルトを外してから、買ったばかりのピースに火をつけた。柔らかい煙が、薄暗い部屋に広がっていった。カー ....
あまり会話の無いまま、駅の改札口に着いた。大勢の人間が、無造作に出たり入ったりしている。前に誰かが、水族館みたいだな、と言っていたのを、いつも思い出す。確かに、色んな種類の人間が、ちょっとずつ違う表 ....
端から見たら、随分と間の抜けた画なんだろうな、と思う。この逆なら、今までに何度か見て来たけれど、今のこの状況、男が泣いていて女が慰めていると言うのは、俺は見た事が無い。何だかおかしくなってしまう。自 ....
「…・Restaurant」
一面小麦のこがね黄金色の畑がなだらかに続いていました。
歩き疲れても道はずっと一本どこまでも、先へ先へと白い輝きを見せています。
小さなメグはまた一 ....
八木重吉の詩を読みました。
明治31年に生まれ、昭和2年に30歳の若さで亡くなった八木重吉は、死後20年近くたってから小林秀雄に見い出されました。
キリスト教の信仰に貫かれた彼の詩を源として今 ....
バグアイドモンスターが襲ってきた!連中は七つの目と非対称な七千とんで二本の腕と一本の足を持つ大変アンバランスなモンスターだ。
その七千とんで三本の触手とも花弁ともいえないぬらぬらした触手をうごめかし ....
つきあって一月たちました
クリスマスイヴの夜
二人は別れました
それから二人は
それぞれの人生を歩み
やがて死にました
二人が死んでも
世界はあり続けました
....
桜が潮風の中で散り、雪のように舞っていました。
この町にも春の終わり、そんな季節がやってきています。
「わあ、きれい」
桜の先に、海峡の光る景色があります。
「ほんとう、いいお天気。気持 ....
別に、泣く事を堪えていた訳じゃないと思う。感情を押し殺して生きていた訳じゃないと思う。ただ、感動する事が、少なくなっていたんだと思う。何事にも動じない、と言えば聞こえはいいが、結局は無感動と言う、あ ....
生ぬるい風が、ジャケットを抱えた脇の下を通っていく。ションベン横町と呼ばれる薄汚い通りの入り口にある喫茶店を出て、俺は人気の少ない方に歩き出した。咄嗟に良い場所が思いつかないが、とりあえず駅から離れ ....
「いえ、そういう事でも無いんですが、違わなくないような」
俺は返す言葉に詰まり、珈琲カップを持ち上げてから、さっきその珈琲を飲み干した事に気付き、汗だくになったグラスの水を、一気に飲み干した。氷 ....
野原は、あたりいちめん紫の花のじゅうたんです。
やさしい風が、あまいかおりをはこんでいきます。
カマシアの花たちは、だれも春の日をいっぱいあびて、気持ち良さそうに顔を日にむけていました。
....
今日は休みなので、町田の国際版画美術館でやっている「ルオー展」に行きました。近所のバス停から11時前のバスに乗り、藤沢で久しぶりにダイヤモンドビル内にある有隣堂に寄りました。お目当ての本は「蕪村句集 ....
その男をはじめて見たのは、ゴールデンウイークが終わったばかりの頃だった。
百年に一度の不況のメカニズムは分からないけれど、この四十人ばかりの会社にも、それは充分実感できるのだった。
上司が煙 ....
特に面白い事も無かった今日の業務を終えて、ロッカールームで着替える。館内全面禁煙、路上も全て禁煙なので、早いとこ駅前で煙草を吸いたい。何度か、外に出た瞬間に煙草に火をつけて、白い目で見られた事がある ....
クマカクレミノムシの幼生期はちょっと女子供には刺激が強すぎる。
六本の足と鋭い牙でヒトガラハナシの成体を捕食するからだ。
ヒトガラハナシは四本の触手と常に露出されたクレパス様の生殖器官を有する ....
あかい爪から夕焼けにじむ
嗚呼、もう満ちてしまうから
呼吸をひとつ
決して後ろをみないこと
怖いと思えば取り込まれる
気を強く持つこと
廃墟には人ならぬものが住む
見えないから ....
道中出会った黒人の少年は痩せぽっちのチビだった。
手足がやけに細く、その癖黒人特有の光沢と張りのある肌。縮れた髪の毛に薄い唇。衣服は支援キャンプで配布されている、年齢に不釣合いな大人用のものをず ....
土煙りの中から少年と大男と若い女が現れた
少年と大男は同じ鳩と繋がっていた
若い女はこの世界の法則の例外を
そんなこともあるのかな、程度にしか気にとめていなかった
大男の右頬か ....
2005年にウエノポエトリカンジャム3という
野外で8時間ぶっ続けで約80組が出演し
詩の朗読をするというイベントの
実行委員会の代表をやらせていただいた。
3というのだからそれ以前に2001 ....
東京湾をフィールドとする釣師にとって、アナゴは馴染みの深い魚である。
キスやハゼを狙っていても、日が沈むころになるとアナゴが食ってくる。
防波堤や漁港の岡っぱりからの釣だから、寿司屋ででてく ....
本日、バック転日和。池谷幸雄は今頃なにをしてるかどうか、という問いに答えるのは、簡単だ。
バック転をしている。相変わらず。月でもいい週でもいい、大阪人がタコ焼きをほうばる回数より多くバ ....
早い朝の淡い光線に君は濡れながらそれでも整然とした様子でそこに生きていた、俺は喉に突っかかるような痛みを覚えながら君の名前を呼ぼうとしたが、記憶に栓をされているみたいにそれはままならなかっ ....
今から30年以上前に高田馬場で朗読会を
していた上手宰さんは僕が尊敬する詩人で、
4月の「ぽえとりー劇場」は世代を越えて詩
を共有する雰囲気になったのが、とても嬉し
いことだった。そして、長 ....
111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151
【散文(批評随筆小説等)】散文詩は禁止。散文詩は自由詩のカテゴリへ。
0.38sec.