Ⅰ
いちばん繊細な季節が
君の心をうす青くゆらめかす
君は君自身の内部へ
幾重にも囁く ひそやかに震える叙情詩を
季節の弦と鍵盤とが
君の想いを奏でるままに
銀のきらめきを 彼方へと ....
青空。
あれは欠けてしまった心だ、
心の欠けらなのだ、
重力のようにわたしを惹き、
赤子の瞳のように影を呑むのだ、
どこにも行けないという幻肢痛。
慰めがたい痛みを慰めよう ....
いつも閑散としているガソリンスタンドの横からその路地に入る。道巾は車1台しか走れないスペースで一方向にしか走れない。両側に貧相な佇まいが軒を連ねているが、途中には産院と歯科医院があってその狭い駐車場が ....
失くした人を
偲んで見上げる
朧月
何かに抱かれるような
宵の人肌
湿った土が
ほんのり香る
始まりと
終わりの理
四条大橋から見渡す
川床の灯りは
春に滲ん ....
不意に思い出すのは
湯船の中で歌う父の
懐かしい歌声
長持唄は
名人の節回し
そう言えばもうすぐ命日だ
死んだ朝に
いっせいに桜を咲かせた
花咲か爺
何年たっても ....
雨の日に哀しげな表情を見ていると何故かそそられる。
その豊かな胸と腰。泣き顔とは裏腹にボリューム感のある容姿も愛おしい。
彼女を公司様から引き離してやろう。
そのまま奪い連れ去って監禁したな ....
久々に訪れた病院の園庭は、
十数本の桜の木が
無数の赤い蕾を膨らませていた。
その生命力は、
春の大気に漲り震え
園庭という枠を獰猛に
突き破っていく不穏さを含んでいた。
膨ら ....
どこへ いこう
故郷も 青も
霧に 埋めた
迷える この身で
暗い 一節を
夜陰に こぼす
指を 捨てる
子どもの 様に
母の 声で
夢魔が 読んだ
デカダンスの 絵本に
....
みんな死ぬのになぜ泣くの?
この大宇宙からみたら
うどんもスパゲッティも同じ
80歳も46歳も同じ
二択を迫りたいなら迫りなよ
意識混濁コンダクター
抗がん剤よりか ....
降り注ぐ雨が
掴み切れず指をすり抜ける
落として来たもの
空がやけに広い朝焼け
終わりなのか
あるいは始まりなのか
レールを走る列車のようには
うまく進まない生き方を
けれど今を精 ....
月の横に大きな鯨が浮かんでいる
ちいさな星や人工衛星を食べて生きるまぼろし
ごちそうさまの煙を吐くと
オーロラに乗ってどこかに帰っていく
きっとあれは
我々のことなんて何も思わなくて ....
人生、いつまでも
学生のノリで
過ごせると思ったら
大間違いだぞ、てめえ!
えっ、そのキャンパスではなく
絵を描く方のキャンパスですだあ?
何言ってんだ、頭大丈夫か?
キャンパス ....
誰かの幸せに
揺さぶられても
自分の思い出
輝く時は
大きすぎる手に
五本指足りず
泳いで潜って
爪の先で会う
無印になった
爪の色は負け
さよならといつも
隣り合わ ....
先生、それならどうして
教科書にそれが
記載されていないのですか?
いいかみんな
歴史の教科書というのは
歴史の許可書なんだ
歴史の記述は
その時の権力者の
思惑に沿って許可さ ....
詩とは何かの答えがどうにか出るたびに
間違っていたのではないかと思考停止して
それはそれは本当に美しく散っていった、
遺された答えを
受取る未来にとっては
死屍累々の
惨めな繰り返しの中で ....
人生が一枚のキャンパスだとしても
俺は絵描きにはなれず
絵は苦手で下手くそ
それでいて、嘘で自分をしっかり塗り固めていないといられない
俺の人生
それでいて
他人にはからきし嘘をつけな ....
自分の夢が
現実になろうとする
現実になった
今までの経験が繋げた
夢へと伸びてゆく道
リアルなイメージが
現実になること
何倍も早める
ポジティブに日常を楽しみながら
....
磨り硝子の向こうをよぎったのは
夜を飛ぶ鳥なのだろうか
それとも
地に落ちていく誰かの魂だろうか
生れ落ちていく無垢な魂だろうか
ぼくの見えぬところで
はじけたり、とんだり、は ....
取り柄なんて何もないし
いたって目立たない人間
脳みその出来はわるいのに
考えてしまう性格
くよくよとジメジメとぬかるんでいる人格
中学の頃は太宰治にのめり込んだ
ような気がする
....
催眠術にかかっている間に
彼らが買おうと思っていた家は燃えた
右も左も分からない子供のような街
サイダー売りの声はとてもよく響く
私の住所は内緒にしておかないと怖い
何が起こるかわかったもの ....
ついに渡すことのなかった
焼き増しした写真のあなたを切り抜いて
ポール・グリモーの、羊飼い娘みたいに
止まったままの四角の中に
梯子をかけて、あなたを連れて、逃避行する
でも本当は
....
詐欺師の女は
ムンクのマドンナ
のような表情を
漂わせ
フラッシュの
光の中に消えた
キムジョンナム
にVXを嗅がせた
女は国家に見捨てられた
ヴェールのなかで
捨て子のよ ....
幼いふたりは
ふたりなりに
ふたなりについて
思い巡らし
どちらかが話出すまで
流れに身を任せた
土曜日の
午前4時
「いつまでも
愛し続けたい
夜が明けたって
何も変わ ....
最近、思う。
宇宙に果ては有るのか、無いのか。
科学者は追う、宇宙の果てを。
....
また一晩が明け
光溢れる一日が来たよ
風はそっと穏やかだし
空はぼうと水色だし
街は花の香に包まれて
実に飄々と軽やかに
ステップ踏んで春は行く
おれはのそっと鬱だけれど
五十九回 ....
完備 第一詩集『abstract』
…………………………
index
you
・footprints
・memo
・units
・difference
i
・ ....
その手は冷え切っているから
あなたが春なのか冬なのか
わからなくなってしまいます
つくしにふきのとは
いつもの場所にいません
あなたの背中をさがして
遠まわりして歩いていたら
風 ....
一周まわって今時の
君の着る服が、
私の前髪をきれいに揃えようとする
君のきるシャッター音が
あまりにデジタルなので
私は前髪を揃えようと思うのだ
私の肺の穴あなから
ミツバ ....
雨のなかの声
とおりみち
夜に立つ
銀の生きもの
夜を 揺らす
曇の音
手をふるもの
雨の去る音
月が照らす海
小さな声
静かな ....
夜
リビングのソファーで母が咳をしてる
姉がトイレのフリをして
白湯を入れに行く
「電気消すよ。もう寝な」
私は父の手紙をしまう
「うん、おやすみなさい」
「おやすみ」
....
887 888 889 890 891 892 893 894 895 896 897 898 899 900 901 902 903 904 905 906 907 908 909 910 911 912 913 914 915 916 917 918 919 920 921 922 923 924 925 926 927
【自由詩】自由詩の作品のみ受けつけます。自由詩批評は散文のカテゴリへ。
3.09sec.