[661]佐々宝砂[2006 04/12 02:18]☆
ない私にとって辞書は親しい友人だ、と考えた私のみが校門から逃げ出せた。
一人で道路をうろうろして、公園に入り込む。公園の樹木の陰にカーテンがあり、逃げ込むと東洋妖怪のアジトがあった。ああよかったこれで助かる、とほっとしたところに、私のあとを追ってきた西洋妖怪軍がアジトに襲い掛かる。予言能力のある件を捕虜にしたいというのが西洋妖怪軍の言い分で、私は捕虜として差し出されてしまった。
赤い振袖着た両手を捕縛され、とぼとぼとつれてゆかれた先に、頭に二本角の男がいた。やい牛女、とそいつが言った。俺が何者かわかるか? わからないと答えたら、そいつはいきなり私を抱きしめて泣き出した。俺はミノタウルスだとそいつは言った。同じ血だ、同じだ、同じなんだなぜわからないと叫びながら、ミノタウルスは私を縛めていた縄をナイフで切り、さらに私の腕に何条もの傷をつけた。血がたらたら出た。痛くないのが不思議だった。
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