[11]田代深子[2010 08/24 23:11]★5
るのか。
 先生がつくりあげた手紙の中の世界では、誰にも増してKの存在が大きい。Kの死後10数年、Kを中心に、先生の心の世界は回っている。だがKの生前も、その存在は先生にとって、自分自身に匹敵するほど大きかったはずである。互いにないものを持つ両者。「選ばれる」のは、自分でなければKであり、Kでなければ自分だとしか考えられない。すでにKを内在化してしまっているようなものだ。
 Kはどうか。思い込み気質のKの恋は激しいかもしれないが、それ以上に、自分に対する先生の評価、というより感情を、Kは最重要視しているようだ。先生に軽蔑されたくない、不愉快な顔をされたくない。様子が気になって部屋をのぞき込むな
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