[664]アラガイs[04/29 11:59]★1
いまでも確信がもてない。まだこの辺りも空き地で広々としていた頃だった。あの日の夕方。凧は隣の屋根を流れてぐんぐんと上空を舞い上がり、とうとう高圧線を越えて雲の中に消えた。手にした糸はすでに切れていた。兄とわたしは、疾風に通りすぎる低空の蝙蝠を打ち落とそうと、必死で長い竹竿を振り回している。
ずっと上空には一台の飛行機が薄く明滅を繰り返している。
点滅も見えなくなった頃、辺りが一段と暗くなり上空にはたくさんの雲が湧いてきた。すると正面上空の厚い雲が割れて、中から光る物体がこちらに近づいてくるのだ。大きな母船、そして周りには小さな円盤。わたしらは怖くなり、直ぐに家族を呼びに庭を駆け巡る。数人の家
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