散文(批評随筆小説等)
坂下さん/MOJO
 
で、お客が来たら作業を休止しなければならない。
 そのうちぼくは不思議なことに気がついた。それは若い女の子で、歳はぼくと同じくらいだろうか。彼女は作業中の場所に頻繁に現れる。何を買うふうでもなく、ぼく等が隣のフロアに移動すると、いつの間に彼女が居て、棚の品物を眺めている。それがスパナだったり電気ドリルだったりするからなおさら不思議である。
 まだ正午にはならないが、きりのよいところで昼飯にする。この辺りは海に近く、漁港もある。なんでもない定食屋のメニューにも、鯵の叩き定食、があったりする。ぼくたち三人はそういう店に入った。ぼくが注文したのは、鯵のなめろう定食。坂下さんは鰯焼魚定食で黒川さんはモ
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