空っぽの万華鏡/
佐野権太
海に落とした万華鏡
ゆらゆら沈んでゆく
閉じ込めたはずの
いくつもの輝き
永遠と信じてた
哀しみの水圧に耐えかねた、刹那
万華鏡は音もなく弾け
また
とろり、とろり
もう、届かない
指先も 光も
やがて
空っぽの筒だけが
ただひとつ
ぽっかりと浮かんで
潮風に吹かれ
ちぎれ
波に彷徨う
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