少女式/今唯ケンタロウ
 

 ……歯車の向こうに、だれかのくちびるが、動いたような気がした。「成長……? ……
 少年はやがて気づき始める。自分のなかで剥がれ落ちていくものに。
 壊れつづける天使の部品は海に流れ、どこかで別のものに組み立てられていた。
 ……歯車に、火がともった。歯車は、廻りつづけている。「せいちょう……
 だけど、少女は砂浜を歩き続けている。
 壊れつづける天使は、あいかわらず少女の手ににぎられている。
 ……歯車は加速度を上げた。火は炎となり、歯車をつつんだ。歯車は、廻りつづける。向こう側のだれかは、微笑んでいるようにも、泣いているようにも見える。「成長」というとてもちいさな声が、だけどそ
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