日付を打たない手紙/藤丘 香子
 
摘みたての朝露に腕を通し駈けていくあの森の 
ほそい光を縫って 
白い蝶が前を牽いていく 
ロゴスの前の二つの手を悲しまないで 
水色の風と音楽 
蝶番の羽ばたき 
あなたの無言を煌く星として記す 
たとえ撹拌された夜の中でも 
わたしを見つけてほしい 
※ 
夜に雨、水の孔雀が羽をひろげる 
斑紋には日付けのない手紙 
硬い声は、きのうのように押しだまり 
ねむるために そして、 
うまれるために文字を読み続ける 
たくさんの文字が白く光りながら 
羽ばたこうとする夜を見上げて 
わたしたちは小さな花のように耳を澄ます 
かた
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