日付を打たない手紙/藤丘 香子
 

摘みたての朝露に腕を通し駈けていくあの森の
ほそい光を縫って
白い蝶が前を牽いていく
ロゴスの前の二つの手を悲しまないで

水色の風と音楽
蝶番の羽ばたき

あなたの無言を煌く星として記す
たとえ撹拌された夜の中でも
わたしを見つけてほしい





夜に雨、水の孔雀が羽をひろげる
斑紋には日付けのない手紙
硬い声は、きのうのように押しだまり
ねむるために そして、
うまれるために文字を読み続ける

たくさんの文字が白く光りながら
羽ばたこうとする夜を見上げて
わたしたちは小さな花のように耳を澄ます

かた
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