夏の骨/今唯ケンタロウ
 
                    七
 
……ビーチサンダルをしりませんか、わたしの、ビーチサンダルをしりませんか。という、声が、がらんとしてさむい感じのする部屋にひびいていた。かべにかかったまま忘れられた一枚の絵に、そっと、耳を近づけてみる。すると、そのなかでざわめきのような音が鳴っているのを感じ、胸さわぎをおぼたが、たったいっしゅんのことだった。もう部屋のなかにはどんな音もなく、しずけさがいたかった。

 部屋を出て、絵になにが描いてあったのか、わからなくなってしまった。でもそれをそれでいいと思えた。

 出たさきは、もう、部屋じゃなく、ただくらくせまいかいろうが、つづいてい
[次のページ] グループ"詩童話篇"
   Point(7)