夏の骨/今唯ケンタロウ
 
 十二
 
 だれかの旅がおわった。






 
                    十三
 
……という、声が、がらんとした部屋にひびいていた。ただ一枚だけ、かべにかかっている色あせた絵、なにが描かれているのかよくわからないそれにふと耳を近づけてみる。すると、そのなかから、たしかになみの音、がきこえるように感じた。

 入ってきたのと反対方向の戸口に、風の手がみえて、わたしを誘う手招きをした。こわくない、もうこわがるひつようはなにもないのだとわたしはわたしに言い聞かせていた。
















 
      
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