梅のおにぎり/千波 一也
めて
車で半日もかかる遠い街まで
勢いばかりで
飛び出そうとしたあの日、
あなたは
わたしを説き伏せようとして
考え直させようとして
(いま思えば懸命な判断だけど
それでも
わたしは出て行ったから
母さん、追いかけてきたよね
反対してたくせに
早起きして
用意していた
おにぎりを
わたしに
持たせようとして
追いかけてきたよね
もちろん、
わたしは
素直に受け取らないから
「勝手にしなさい」って
助手席に
強引に置いて
怒っていたけど
母さん、
わたしの車が
見えなくなるまで
見ていてくれたよね
ミラーに映ってたよ
自分のしようとして
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