梅のおにぎり/千波 一也
 

あなたの握るおにぎりは
いつも大きくて
中身はおおよそ梅で
わたしが出かけるときには
「お金を使わず済むように」って
たかだか100円程度のことなのに
保温のバッグに
詰めこんで
漬け物なんかも添えて
おしぼりも
入れたりして


ねえ、母さん
わたしは何度か
「食べたことにして捨ててしまおう」とか
「人目を避けて食べなきゃな」とか
思ったりしたんだよ
知らないよね
知る必要がないよね
知らずにいて、



ねえ、母さん
あの日もわたしに
おにぎりを持たせてくれたよね
「仕事を辞める」って言い張って
自分で勝手に
面接の日取りを決めて
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