エリオット「伝統と個人の才能」/藤原 実
 
                        (「伝統と個人の才能」)


ここに「非個性」と「情緒からの逃走」という二十世紀の詩における最大の手品のひとつが現出することになった。


エリオットはロマン派に対する批判から、これらの説をうちだしたが、そのやり口というのも相当手品師的に思う。
ここでタネあかしというか、ロマン派の詩人たちのための弁護(といえるかどうか)をするとすれば、たとえばワーズワスにしても個人的な情緒をたれ流しにしていただけではなかった。


「これらの詩において私がくわだてた主要な目的は、普通の生活の出来事
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