ペイター「ルネサンス」 (4)/藤原 実
していた、と書いてあることからも察せられる。吉田健一はペイターの訳者でもあるから。
その吉田健一の『英国の近代文学』を読むと、吉田はヒューム、エリオット、リチャーズをさほど評価しない(エリオットの有名な個性の没却論などに対しては「[エリオットは]錯乱している」とまで言っている)一方で、ワイルドやシモンズをひじょうに高く買っている。
ワイルドもシモンズもペイターからひじょうな影響を受けた弟子であり、とくにワイルドはペイターの形式重視の考えを極端にし、もっと大胆に主張して、モダニズムの魁のひとりとなった。
エリオットは「ペイターはこの本で後の世代に属する一流の人間には誰に
[次のページ]
前 次 グループ"『世界の詩論』(青土社)を読む"
編 削 Point(3)